退職した人は16%「不妊治療」調査で見えた過酷さ 医師から見た「働きながら不妊治療」の現実
私の患者さんの中にも、周囲に不妊治療をしている事実を伝えていない方がたくさんいます。有給休暇が取りやすかったり、勤務の時間や場所が柔軟に調整できたりする職場は、不妊治療をしている方々にとっても望ましい「働き方」であるということを強調したいと思います。
不妊や不妊治療に関する話がもっとオープンにできるようになり、より柔軟な働き方に寛容な社会になってくれれば、と期待しています。
“産みにくい社会”から“産みやすい社会”へ
1986年に男女雇用機会均等法が施行されてからというもの、女性の有職率はどんどん上昇してきました。「いつでも産みたいときに産める」リプロダクティブヘルス/ライツを守るには、社会と教育、2つの課題を両輪で改善する必要があります。
近年、性教育の重要性が改めて見直されていますが、小学校高学年頃など若いうちからの性教育は、妊娠・出産に関する正しい知識を持つことにつながり、将来のさまざまな選択肢を示すという意味で非常に重要です。
また諸外国では、学校教育のみならず、企業におけるプレコンセプションケア領域の支援が注目されています。
例えば産婦人科医による妊娠・出産セミナー、保健師・助産師による個別カウンセリング、生命保険会社による出産に備えたマネープランづくり、社会保険労務士による産前産後に申請できる補助金の解説、妊婦のいる家庭・妊娠を希望する家庭に対するワクチン接種などを実施し、出産を希望する従業員を支え、従業員のライフプランに寄り添うサポート体制を作ることが、企業イメージや価値を高めることにつながり、より優秀な従業員を獲得できるようにすると考えられています。
“産みにくい社会”から“産みやすい社会”へ──。女性の社会進出と、リプロダクティブヘルス/ライツを両立するには、日本はどんな社会を目指すべきなのか。妊娠・出産だけでなく、出産後に働きながら子育てをするカップルを支える制度の拡充も併せて考えなければならないでしょう。
少子化が大きな社会課題となっている今、当事者のみならず、国民みんなで考え、話し合い、子どもを“産みやすく”、“育てやすい”社会を実現していく必要があります。不妊治療の公的医療保険の適用範囲が広がった今回のニュースが、社会が変わる1つのきっかけになることを願ってやみません。
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