地方の中小企業でママ2人が進める新規事業 2代目社長、「女性が持つセンスのよさ」に嫉妬

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Warisの登録スタッフ関本温子さん。総合商社で総合職として活躍していた(撮影:ヒダキトモコ)

その関さんにとって頼りになる右腕がもう一人欲しいと考えていた頃、初野社長はあるビジネスコンテストでWaris(ワリス)の代表・米倉史夏氏に出会う。Warisは、2013年4月に設立された専門的なスキルを持つ主婦と企業のマッチングを行う会社だ。

話を聞けば、豊富な経験を積んだ優秀な人材に、必要な時に必要なだけ業務を発注することができるという。それならばと、営業業務の経験がある女性を紹介してもらうことにした。

こうしてやって来たのが、大手総合商社の総合職としての勤務経験を持つ関本温子さん(31)。機能性化学品の物流手配、価格交渉、顧客開拓など営業全般に携わってきたという。第1子を出産して育児休業から復職するも、出産前と同じように仕事ができないことに限界を感じて退社。それでも働きたいという思いを抱き続け、生後数カ月の第2子を抱きながらWarisに登録に訪れた女性だという。

週あたり7.5時間程度の稼働で業務委託契約を結び、関さんとともに新規事業を担当してもらうことにした。

英語が堪能な2人のママ

関さんと関本さん。初野建材に新たに加わった2人の女性は、初野社長が期待していた以上の営業活動を積極的に進めているという。関さんが営業先で聞いてきた話を、週1回のミーティングで共有しその先の営業戦略につなげる。関本さんがA4の紙1枚にまとめた営業資料を持って、関さんが営業に回る。

関さんが埼玉建築士会の会報誌から広告枠を取ってきて、関本さんがその内容を作り込む。「こういう訴求手段があるなんて、私には思いつかなかった。このセンスのよさに悔しいくらい感心しますね」と初野社長は言う。英語が堪能な2人は、環境関連の展示会に出向き、同分野の製品を出展していた米国の会社の社長と意見交換をしてきたという。

週刊東洋経済臨時増刊「ワークアゲイン」は1月30日発売

「これまで過ごしてきた業界の中で、私自身が勝手に『男性か女性か』という壁を作っていたところがあった。女性に任せてみると新しい発想がどんどん広がる。ただ、女性にはさまざまなライフイベントがあることによって、働くにあたって妥協しなければいけない点がある。関さんは自宅近くでしか働けないし、関本さんはフルタイムでは働けない。でもそういうことを承知のうえでうまく取り込んでいけば、先に進めるということがわかった」

初野社長はこう語る。ライフイベントを迎えた女性には時間や場所の制約がつきまとう。だがそれを前提として活用すれば、優秀な戦力として会社の成長におおいに貢献する可能性があるのだと身をもって体験しているのだという。

堀越 千代 東洋経済 記者

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ほりこし ちよ / Chiyo Horikoshi

1976年生まれ。2006年に東洋経済新報社入社。08年より『週刊東洋経済』編集部で、流通、医療・介護、自己啓発など幅広い分野の特集を担当してきた。14年10月より新事業開発の専任となり、16年7月に新媒体『ハレタル』をオープン。Webサイト、イベント、コンセプトマガジンを通して、子育て中の女性に向けた情報を発信している

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