戦後日韓関係を舞台裏で支えた韓国知識人の独白 知日派知識人・崔書勉のオーラルヒストリー

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――日本にとって韓国が重要だというのは、やはり北朝鮮とか共産主義から日本を守るためには、存在が重要であると?

 もちろんそうです。それから韓国を非常に大事にしていて、例えば閔寛植という文教部長官が日本に来て、僕に「おい、おまえ、総理大臣に会わせろ」と。当時、福田さんは総理大臣だったから、「総理に会わせろ」と。「なんだ、韓国から来るとみんな、俺と総理と親しいというのでみんな言うんだけど俺も程があるよ。来るやつにみんな会わすわけにいかない」と言ったら、「おまえは研究院長で、俺は文部大臣じゃないか。恰好がいいじゃないか。会わせてくれ」というので、しようがないから福田先生に、「韓国から文部大臣が来ました」「あ、そうかね」「私、大変世話になっています」「しようがないな。じゃ、赤坂の大野というところに何日の何時に連れていらっしゃい」と。それで、文教部長官に決めたわけだ。あいつ喜んじゃって、「帰国報告を大統領に、日本で総理大臣に会って来たと言えば俺らしくなるな。ありがとう」と。

ケガを押して韓国人と面会した福田首相

その日、テレビで福田大臣は京都に来て怪我をして入院したと。これがNHKのテレビに出て、「あ、きょうはもうだめだな」と。会えなくなっても僕は大きく傷みを感じないけど、この文部大臣は「俺がせっかく来たのに、会えないで帰るのか。なんとか会えないかね」「とにかく決まった時間に大野に行ってみよう」「怪我したとテレビで言っているのに」「あの先生は約束に非常に厳しい人で、遅れるなら遅れる、来られないなら必ず言うんだ。私には何にも言って来ないから私は行くしかない」「おまえ、ちょっと電話してみろ」「するほうがおかしいよ。私は行く。おまえは来ないなら来ないでいいよ」と。そうしたら、「おまえ、きっとだめだと電話が来るに決まっているよ」と。

それで僕も半信半疑だったけれども、決まった時間に行ったら先に来ていらっしゃる。文部長官は、ほとんど半信半疑で行ったのにいるからもうびっくりして、「先生、怪我をなさったのはどうなさったんですか。入院されたというので、きょうはだめだと思ったのに」「だめなら、だめと言うよ。いや、乗るときに真ん中にひざ掛け。そこで滑ったら、アヤ~ッと痛かったんだ。それを新聞記者が見て『骨が折れた』と言って放送したけど、すぐ持ち直したので、まあ一日休んでもよかったけれども、あんたと約束があったから来ちゃったよ」と。文部長官がこの話を聞いて、韓国に来て福田を褒めると同時に、「崔書勉というのは、とても大事にされているみたいだ」と噂になっちゃって。

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