加齢による「白内障の症状」軽視してはダメな理由 「眼内レンズ」なら老眼の治療もできて一石二鳥

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眼圧が高くなると網膜の細胞や視神経がやられてじわじわと視野が狭くなります。よくあるパターンとしては、まず視野の内側(鼻側)が見づらくなり、続いて視野の下方が見えづらくなっていきます。さらに進行すると視野の中心のみを残してほとんど見えなくなります(求心性視野狭窄)。このような視野障害の進行は左右差が大きいことも多く、例えば左眼に視野障害があっても右眼がそれを補ってしまうため、症状が進行してから気づくことも少なくありません。

さらに、隅角が狭いタイプの緑内障では、眼圧の急激な上昇により「急性緑内障発作」という緊急疾患を引き起こす場合があります。これは激しい頭痛と嘔吐・眼の痛み・視力低下をきたし、治療しなければ数日のうちに失明します。喘息の薬や風邪薬の一種が原因となるため、定期的に眼科で眼圧を測定するほか、眼圧が高く隅角が狭いと言われた場合は薬を飲む前に医師に相談することをおすすめします。また、とくに近視が強い方やご家族に同様の症状がある方は緑内障のリスクが高いため、一度眼科を受診するようにしましょう。

治療はどのタイプでも点眼薬で眼圧を下げることが重要です。緑内障は自覚症状がなくてもじわじわと進行する疾患のため、必要ないと感じても医師の処方は守りましょう。

「点眼薬」さし方のコツ

なお、点眼薬はすこし上を向いて下まぶたを指で引き、そこに1滴落とせば眼の中に十分な量の薬がひろがります。よく黒目の真上に薬を落としたり、心配だからと何滴も薬を落としたりする方がいらっしゃいますが、どちらも必要ありません。薬が流れ落ちることが心配な場合は、涙の出口がある目頭をおさえ、数分間眼を閉じましょう。

眼科疾患は、ゆっくりと進行する場合も多く、また他人から気づかれにくい症状が多いためご自身で気をつけることが大切です。普段とものの見え方が違う、眼鏡やコンタクトを変えたばかりなのに度数が合わないようなことがあれば、早めの眼科受診をおすすめします。

いつまでもクリアな視界を保つために、今回の記事がその一助となることを願っています。

上原 桃子 医師・産業医

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うえはら ももこ / Momoko Uehara

横浜市立大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構理事。身体とこころの健康、未病の活動に尽力し、健康経営に関する医療系書籍の編集にも関わっている。医師と患者のコミュニケーションを医療関係者、患者双方の視点から見つめ直すことを課題とし、とくに働く女性のライフスタイルについて提案・貢献することを目指している。

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