公立小中高・特別支援学校は2056人の「教員不足」 本音と建前が渦巻く文部科学省の教育予算

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文部科学省は小学校の「35人学級」や、小学校高学年の専門教科でクラス担任とは別の「教科担任制」の導入を進めている(写真:つむぎ/PIXTA)

このところ、「教員不足」がにわかに注目を集めている。2022年1月末に、文部科学省が「『教師不足』に関する実態調査」を発表し、2021年5月時点で全国で2056人の教員が不足していることを示した。

これを受けて、4月28日に、末松信介文部科学大臣は、都道府県や政令指定都市の教育委員会の教育長らが参加するオンライン会議で、教員不足解消に向けてあらゆる手段を講じて教員の確保に取り組んでほしいと訴えた。

大臣が地方公共団体へ教員確保を訴えたワケ

ここでいう「教員不足」は、定義に十分注意する必要がある。また、教員採用の仕組みも的確に理解する必要がある。そうでないと、妙な印象論で議論があらぬ方向に向かってしまう。

まず、そもそも「不足」しているといわれている教員は、公立の小中高校と特別支援学校の教員である。私立や国立は含まれない。そして、公立の小中高校などの教員の人事権は、都道府県や政令指定都市などの教育委員会が持っている。だから、前掲の末松文科相が訴えたのは、文部科学省は人事権を持っていないので、教員の採用を担う教育委員会、その長たる教育長に協力をお願いする構図が背景にある。

もちろん、文部科学省は、その教員人件費の一定割合を予算として確保して、地方自治体に配っている。だから、教員確保のために予算を出しているから、積極的に採用してほしい、という話になる。

では、「教員が不足」するという状態は、どういうものなのか。

前掲の文科省の調査では、「臨時的任用教員などの講師の確保ができず、実際に学校に配置されている教師の数が、各都道府県・指定都市などの教育委員会において学校に配置することとしている教師の数(配当数)を満たしておらず欠員が生じる状態」を指す。なお、配当数を上回って教員が実際に配置された場合は、過剰とはみなさず、過不足なしとして集計している。

前述のように、教育委員会は人事権を持つから、公立学校に何人教職員を配置するかを決められる。ただ、お金があればたくさん教職員を雇えて、その人件費の一定割合を国から補助金などがもらえるなら、国にも負担してもらう形でたくさん教職員を雇おうということになる。

すると、国は予算が足りなくなるので、そうならないように国が補助金などを出す際に児童・生徒数に比した標準的な教職員数をかなり厳格に決めている。

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