ロシアのウクライナ侵攻は、わが国の安全保障論議にも大きな衝撃を与えている。今夏の参院選挙後にも佳境を迎えると見込まれる、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の「防衛戦略3文書」の策定に向けた動きも、活発になっている。
わが国の防衛関係費は、2022年度当初予算で5兆3145億円である。自民党の安全保障調査会を中心に、目下GDP(国内総生産)比が1%程度である防衛費を、今後5年以内に2%以上へ引き上げるよう、政府に要請しようとしている。
防衛費倍増の動きはNATOと関係
防衛費の対GDP比を2%以上に引き上げるとは、どういうことか。それは、ウクライナ支援で結束しているNATO(北大西洋条約機構)の動きと関係がある。
NATOは、ウクライナ侵攻やコロナ禍の前から、国防費の対GDP比2%目標を掲げていた。2014年のことだ。当時、NATO加盟国であるEU諸国において国防費対GDP比は、平均で1.19%だった。それが、2019年には1.53%に上がった。
加えて、今般のウクライナ侵攻を受けて、欧州域内に戦場を抱えることとなった結果、国防費増額を表明するNATO加盟国が次々と出てきた。
特に、強い印象を与えたのは、NATO加盟国のドイツとNATO非加盟国のスウェーデンである。ドイツは、健全財政路線を堅持しているが、2022年から国防費を対GDP比2%とすべく予算を組んだ。対GDP比でみると、2021年は1.49%だったところから2%にまで大幅に増額するという。
そして、福祉国家として知られるスウェーデンも、国防費を対GDP比で2%にすることを表明した。スウェーデンは、2015年以降コロナ禍の前まで、財政収支を黒字にし続けていた。
このように、欧州諸国で国防費を対GDP比2%に増額する動きがあって、日本でも防衛費を対GDP比で2%にするよう求める政治的要求が強まっている。日本もそうしないと、NATO加盟国から冷ややかに見られるとの意見も出ている。
日本の防衛関係費は、NATO基準の国防費とは定義が異なるので、単純に比較することはできない。NATO基準の国防費には、退役軍人への恩給費、PKO(国連平和維持活動)関連経費、海上保安庁予算などの安全保障に関連する経費も含まれている。
それを踏まえて、日本の予算でNATO基準に直して計算すると、2021年度の金額は約6.9兆円、対GDP比で1.24%程度となる。対GDP比2%は11.2兆円であるから、あと4.3兆円増やさなければならなくなる。
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