日本の防衛費は「対GDP比2%」へ倍増できるのか 安全保障戦略と経済・金融・財政の深い関係

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国家予算で4.3兆円とは、どのぐらいの規模なのか。2022年度予算(一般会計と特別会計の純計)で、少子化対策費が4.4兆円、生活保護給付などに充てる生活扶助等社会福祉費が4.8兆円といったところである。それらの年間総額に匹敵するほどの規模の増額をしないと、対GDP比で2%には達しない。

実はこれまで、防衛関係費は、財政健全化の犠牲になって削減されてきたのではなく、逆にその中でも優遇されて増えてきた。第3次安倍晋三内閣で、各歳出分野での予算編成方針を示す歳出の目安が「骨太方針2015」で設けられて以降、2022年度までの間に、防衛関係費は4000億円程度増えている。公共事業費は1000億円程度、文教及び科学振興費は640億円程度増えたが、それ以外の社会保障費以外の経費は、逆に合計して3000億円強減らされている。防衛費の増額は、ほかの経費の削減や効率化を行うことを通じて、実現してきた。

対GDP比2%を実現するうえで、ほかの経費を減らしてでも防衛費を増やすという方針に、多くの国民が納得できるかが、問われよう。

国債を増発して防衛費を増やせばいい?

いや、そもそもほかの経費を減らしてでも防衛費を増やすという発想自体が、緊縮財政的な発想であって、そうではなく国債を増発して防衛費を増やせばよい、という見方もあろう。

確かに、防衛装備品の中には、単なる消耗品ではなく、それなりに長い期間安全保障上の重要な役割を担うものもある。長期間にわたり国民に恩恵をもたらすものならば、その購入費を国債で賄えばよいと思うかもしれない。

しかし、わが国を取り巻く安全保障環境がかつてないほど厳しい中で、ひとたび購入した防衛装備品が、長年にわたりそのまま安全保障上の効力を持ち続けるものは、年を追うごとに少なくなっていくだろう。5年や10年も経てば周辺国が強化する軍事力に比して陳腐化する装備品が続出することもありうる。そうなれば、短期間でさらに高度な防衛装備品を購入しなければならない。だから、国債で防衛費を賄うと、その恩恵を受ける期間はごく短期間にとどまるものの、その元利償還費の負担が長きにわたり国民に及ぶ羽目になる。

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