公立小中高・特別支援学校は2056人の「教員不足」 本音と建前が渦巻く文部科学省の教育予算

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他方、東京都は0%(不足人数ゼロ)である。こうみると、過疎部の県で不足率が高いようにも思えるが、山形県、群馬県、新潟県、和歌山県、山口県、さいたま市、千葉市、名古屋市、大阪市、福岡市も不足人数がゼロなので、必ずしも過疎部で不足していて大都市部で不足が生じていないとばかりはいえなさそうである。ちなみに、東京都の隣県では、埼玉県が0.43%、千葉県が0.64%、神奈川県が0.52%と全国平均よりも高い。

このように、子どもが多い大都市部で教員不足が顕著、とは断定できない。大都市部でも、うまく教員を確保できていない県では不足が生じているし、過疎部で子どもの数が少ないけれども僻地の学校に教員をうまく配せないと不足が生じたりする。

そんな状況の中で、政府は、2021年度から小学校を「35人学級」にすることとした。つまり、これまでの学級編制の標準では、小学1年生だけが35人だったが、今後小学校の全学年を順次35人にすることにしたのである。加えて、2022年度からは、小学校高学年の専門教科で、クラス担任とは別の「教科担任制」を導入した。

「35人学級」を導入した裏事情

なぜこのような取り組みをするのか。教育効果を高めたいという善意はもちろんある。ただ、そればかりが動機ではなさそうである。その政治的背景には、少子化によって児童数が減るのに合わせて教員の定数が減らされると、教員の雇用が維持できないという懸念もある。

現に、近年での予算折衝では、次のような教職員定数のやり取りが毎年のようになされている。義務標準法などに従い、児童生徒数が減れば、機械的に基礎定数は減らさなければならない。これに伴って教職員が減ったからといって、児童生徒の人数に比した教職員の数は減らないから、それだけで教育の質が落ちるわけではない。

しかし、教職員定数の減は、教職員の雇用に直結する。そこで、「35人学級」とか「教科担任制」とかという名目をつけて増員して、教職員定数が減るのを抑えているのである。児童生徒数の減少に合わせた教職員定数の減少を「自然減」と呼ぶなら、予算折衝の結果実現する教職員定数の減少は、自然減のおおむね半分程度として決着している。

次ページでは、「教員不足」の何が問題なのか
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