日本で繰り返すドーナツ人気「3つの大きな節目」 日本のドーナツの歴史を変えたのはミスド

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三度目となる今回のブームは、人気のパン屋が販売するなど、ブリオッシュの発酵生地を使ったドーナツが目立つ。ふわふわの食感は、スフレタイプのチーズケーキやスポンジケーキ、コッペパンなどが代表する日本人好みだったことも、人気の要因と言える。それまでの主流は、ベーキングパウダーで膨らませるケーキ生地だった。

ブームが訪れるのは、一度ブームが沈静化するからだ。ドーナツが廃れるのではなく、流行の店の味が陳腐化し他の目新しいスイーツに目が行くだけで、忘れられるわけではない。新しいブランドができるたびに流行するのは、もともとドーナツが愛されているからだろう。シンプルな食材を使ったドーナツは、素朴で懐かしい味わいである。誰でも食べたことがある味で値段も高くない、気軽な定番スイーツである。

社会課題を解決する食品にもなっている

今回のブームは、ラシーヌもそうだが、いくつかの店が社会課題を解決することを掲げている点にも特徴がある。ラシーヌは食材のロス率が驚異的に低い飲食店ブランドで、オーガニックな食材を使ってきた。

やはり産地の課題を解決しようと、北海道の食材を使う学芸大学の「ヒグマドーナッツ」、ヴィーガンのドーナツを売る下北沢の「ユニバーサル・ベイクス・ニコメ」などが今は人気になっている。

(撮影:今井 康一)

環境を守ること、健康的で持続可能な食を選ぶことといったSDGsの考え方は、近年急速に食の世界に浸透してきた。食べること、買うことを通じて社会貢献することがおしゃれ、というトレンドが、やがて本気で社会の問題に取り組む人たちを増やしていくことにつながる可能性はある。

SDGsへの取り組みは、日本は遅すぎ、広がらなさすぎると言われ続けているが、もしかすると、こうしたメディア化した食から、社会を変えていくことが日本的なのかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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