新型「プジョー308」大胆なのに伝統的である理由 大胆な中に宿るエスプリ=フランスの精神とは

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センターコンソールの収納スペースが豊富なのは、プジョーの良き伝統どおり。ATセレクターがシトロエンC4と同じスライド式スイッチになったことも、スペース効率に貢献している。

シートは、アリュールがファブリック、GTは合成皮革とアルカンターラのコンビで、ステッチの色もアリュールは爽やかなライトブルー、GTはイメージカラーに近いライトグリーンとして、キャラクターの違いを表現している。

リアシートは身長170cmの筆者が前後に座った場合、ひざの前に15cmぐらいの余裕が残り、頭上空間も十分。ニースペースが30mm拡大したという説明にも同意できるし、座面が20mm低められた違和感はない。

ワゴンのホイールベースにも伝統が

発表会には展示されなかったが、ステーションワゴンのSWについても触れておこう。プジョーも他の多くのブランド同様、近年はSUVのラインナップを充実させているが、新型308は304時代から続くワゴンを引き続き用意する。

ハッチバックと同様、「アリュール」と「GT」の2グレードが展開される「SW」(写真:ステランティス ジャパン)

SWの特徴は、ホイールベースがハッチバックの2680mmに対して、2730mmとやや長いことだ。フランス車は、昔からワゴンのホイールベースを長めにとる傾向があった。現在のミニバンのような3列シートの車種をワゴンボディで用意していたためで、プジョーは第2次世界大戦前から、こうした作りを伝統としてきた。

先代308もこのパッケージングを受け継いでいた。おかげでリアシート足元の空間はハッチバックより広く、新型308SWもこのメリットを継承していると思われる。

同様の作りは、308のライバルであるルノー「メガーヌ」も以前から取り入れており、ゴルフも現行型でハッチバックとワゴンの「ゴルフヴァリアント」のホイールベースを違えてきた。フランス車の流儀をドイツ車が取り入れた格好だ。

スポーツツアラーと名付けられるルノー「メガーヌ」のワゴンモデル(写真:ステランティス ジャパン)

ホイールベースの伸延にともない、SWの全長はハッチバックの4420mmから4655mmに。荷室ももちろん広くなっており、ハッチバックの412リッターに対して608リッターを誇っている。

スタイリングは、フロントまわりこそハッチバックと共通だが、リアは低い開口部を実現するために、ナンバープレートがゲートに移され、リアコンビランプ間の黒いバーがなくなるなどの違いが見られる。

ボディサイドではハッチバック同様、フェンダーやサイドシルのキャラクターラインが明確になり、サイドウインドウは先代と比べると下端が上がった一方で、上端は後半をスロープさせた。ハッチバック同様、ダイナミックさを増したという印象で、実車を見るのが楽しみだ。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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