ウクライナ支援にポーランドが全力を尽くす理由 侵略された歴史を共有、日本とも強い絆

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今回のロシアによるウクライナ侵攻で、ポーランドは国を挙げて避難者への支援にあたっており、毎日、企業や個人によるボランティアがサポートを続けている。そんな中、ポーランドと深いつながりがあり、現地に支部を持つ福田会は、避難者への直接的な支援が可能なことから実施するに至ったという。

ポーランドのウクライナ避難者に対して、日本から支援を継続している福田会の我妻みずきさん(写真・本人提供)

実は福田会は、2016年から同会の子どもたちと東京にある63の児童養護施設の子どもから選手を選抜してサッカーチーム「東京フレンズ」を結成。チームはポーランドのワルシャワで開催される「児童養護施設の子どもたちのためのサッカーワールドカップ(Hope for Mundial主催)」に、新型コロナが流行するまでの過去4年間、参加していた。その際、ウクライナの児童養護施設から選抜されたチームとも2回対戦しており、言語や文化の壁を越えた友情を育んでいた。福田会にとってウクライナは、決して遠い存在ではなかったのだ。

刻一刻と変わる状況に合わせた支援を

我妻さんによれば、4月28日現在、福田会関係者からの寄付用に設立した同会後援会ウェブサイトのページや、一般向けに開設したクラウドファンディング経由で、7000万円を超える寄付金が集まっているという。寄付金はポーランド支部のASAGAO有限会社に送金され、所在地のクラクフを中心に避難者支援に活用される。現在までに、駅の避難施設での不足物資の提供やウクライナ料理店での食事提供のほか、幼児避難者の滞在先となるポーランド国内の児童養護施設への支援についても準備を進めているそうだ。今後も現地の状況を見極めながら、必要な支援を続けるとのことだった。

最後に、ウクライナへの支援における最大の問題は何かを聞いた。

「毎日、ポーランド側と打ち合わせを重ねていますが、避難者の数が増え続ける一方、滞在場所の不足から駅の床で寝て生活する人がいます。ウクライナの児童養護施設から子どもらが避難してきて、子ども用物資の不足や滞在先整備も必要になっています。状況が刻一刻と変化し、緊急支援が求められる中、福田会ではポーランド支部を通して、日々、現地の状況を確認しながら支援方法について検討しています。避難者に寄り添った支援が続けられることを願っています」(我妻さん)

戦争の長期化とともに避難者に寄り添った支援活動が続けられるのか。福田会はじめ関係者間で模索が続いている。

「親日国」さながらの関係を築いてきたポーランドの声に対し、今一度、私たちはしっかり耳を傾け、できる限りのサポートを進めるべきだろう。かつて日本が弱者のために率先して進めた人道支援を、今度は私たちが引き継ぐ状況にある。人道支援国家・日本の力量が、今まさに試されていると言える。

高橋 正成 ジャーナリスト

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たかはし まさしげ

特に台湾を中心に、時事問題をはじめ、文化、社会など複合的な視座から問題を考えるのを得意とする。現役の翻訳通訳者(中国語)。

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