ウクライナ危機以降、「別の世界」を生きるようになった人々が増えている。
どうやら「その世界」では、プーチン大統領はネオナチの暴力と支配からウクライナの人々を解放する英雄であり、ブチャをはじめとする民間人の虐殺はウクライナの自作自演であり、アメリカはウクライナと致死性の生物兵器・化学兵器を開発しているという……。
ロシアのディスインフォメーション(故意に流される虚偽の情報)がじわじわと効いている証拠だ。個人が持つ世界観や思想信条を補強するために使われている場合が多く、日本でも海外と同様、反コロナワクチン運動の人々に訴求している。
戦争を虚構と主張するデマも
また、「どっちもどっち論」を正当化する格好の材料になっている面がある。驚くべきことではあるが、ウクライナ侵攻そのものがVFX(視覚効果)やクライシスアクター(被害者を演じる役者)によって作り込まれた虚構であり、西側のマスメディアがこれに加担しているという荒唐無稽なデマすらも、一部では真実の物語として受け止められている。
BBCは3月初めの段階で、「戦争はでっちあげだ、メディアの捏造(ねつぞう)だ」というメッセージとともに拡散された動画を検証し、警鐘を鳴らしていた。
荒廃した街中で若い男女が血糊を顔に塗っている動画が、「クライシスアクター」の姿を捉えたものとして複数のソーシャルメディアで数百万回も再生されていたのだが、それは2020年にウクライナのテレビドラマ「コンタミン」の制作セットで撮影されたものと判明した。
大勢の人々が広場に集まって、映画監督から逃げたり叫んだりするよう指示されている動画が、同じくソーシャルメディアで大量にシェアされていた。これは英バーミンガムのヴィクトリア広場でロケを行った英仏合作のSF映画『2020 世界終焉の日』(原題Invasion Planet Earth)の撮影風景であることがわかった(【解説】 ウクライナ侵攻は「でっちあげ」というネットの偽情報/2022年3月8日/BBC)。今もなお、戦争の信憑性を問う画像などの投稿は後を絶たない。
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