中台対立で台湾を刺激したウクライナ人女性 台湾に帰化した女性への批判がアイデンティティー論争に

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台湾としては、中国が押しつける「同族意識」は受け入れられるものではないようだ(写真・ barks / PIXTA)

台湾で活躍する、ウクライナ出身で、元新体操の選手だったラリーサ・バクロワさん(中国語名「李瑞莎」)のSNSでの投稿が、台湾で大変な物議を醸した。「言われなき誹謗中傷で悲しみに暮れたが、それでも負けずに前向きに頑張る」という内容だった。それは、ある投稿者が匿名掲示板に、「ラリーサさんの運営する新体操団体が優秀な選手を引き抜いている、募金で得られた資金流用が不透明、所在地の桃園市がラリーサさんの団体だけに補助金を交付している」といった内容を投稿したからだった。

批判は中国の対台湾統一工作の一環?

ラリーサさんは台湾で芸能活動をしている有名人でもあったことから、ネット上でまたたく間に真相究明と犯人探しが始まった。その過程で、閉鎖的な台湾スポーツ界への批判とともに、投稿者の一人が中国出身の新体操指導者であることまで突き止めてしまった。さらに、「これは中国の統一工作の一環だ」とする意見も出現し、政治的に敏感なシーズンに入る台湾で、人々のアイデンティティーをかき立てる事件に発展している。

ラリーサさんは3歳から新体操を始め、16歳までウクライナ代表として数々の栄光を獲得した。チームメイトには、2004年のアテネ、2008年の北京両五輪で銅メダルを獲得したアンナ・ベッソノバさんがいる。ケガで選手生活に終止符を打った後、ファッションモデルや芸能活動をしながら経済学修士号を取得。アメリカで台湾人の夫と知り合い結婚、台湾に移住し国籍も取得した。2007年ごろから台湾で芸能活動を開始。その容姿端麗、あふれんばかりの台湾愛で人々を魅了し、多文化社会を掲げる今の台湾にあってシンボリックな存在でもある。

そんなラリーサさんがアスリートとしての心に再び火を灯したのは、2017年に台湾で行われたユニバーシアード大会だった。そこで、台湾新体操チームの演技にいたく感動し、台湾新体操界に力を尽くす決意を固める。

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