高雄市長解職であらわになった台湾社会の分断

リコール支持者にみる政治的対立の現実

台湾史上初のリコールが成立し、解職されることになった高雄市長の韓国瑜氏。2020年1月の台湾総統選の投開票後に敗北を認める韓氏(中央)(写真:ロイター/アフロ)

6月6日、台湾政治史上初の事件が起こった。

直轄市である高雄市で韓国瑜市長(62)の罷免(リコール)を問う住民投票が行われ、成立要件だった有権者総数(約230万人)の4分の1を大きく上回る、約94万票が賛成し、市長の罷免が成立した。

韓氏は2018年の高雄市長選挙で中国国民党の候補者として立候補し、約89万票で当選した。今回リコールが成立したことにより、7日以内に解職されることになった。

目立つ韓氏支持者の「異常な行動」

親中派の韓氏は2018年の市長選以来、「韓粉」と呼ばれる熱狂的な支持者に支えられていた。中国と一定の協力関係を構築したいが、世論を完全にくみ取れずに選挙で苦戦続きの国民党にとって、韓氏は票が読める数少ない政治家であり、無視できない存在となっていた。

しかし、韓氏のメディア露出が増えるとともに、意見が違う者への嫌がらせを行う韓粉の行動も目立つようになってきた。今回の住民投票でもカメラで投票行動を監視するような韓粉の異常な様子が明らかになるなど、台湾社会の分断ぶりがしばしば指摘されるようになった。そして、それは国民党と与党である民主進歩党の間の分断だけにとどまらない。

この分断はどこまで進んでしまっているのだろうか。高雄市の住民投票の最中、韓氏のリコールを呼び掛ける団体は演説で必ず、「結果がどうであれ、投票が終わった後、私たちは団結して進めなければならない」という言葉を呼びかけていた。

これは単に韓粉との怨讐を超えて、団結することを呼びかけているものではない。それは台湾人1人ひとりにとって身近な存在、すなわち家族にも向けられている。というのも、リコール支持者の家族の中で、実際に一種の分断が起きている例があったためだ。

今回の住民投票で、台北に生活の基盤を置く子どもが投票のために高雄に戻ろうとしたところ、親から「戻って来るな、戻るなら親子の縁を切る」とまで言われた人がいる。子どもはリコール賛成だが、親はリコール反対。今の台湾には政治が家族を引き裂いている現実があるのだ。

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