そう「あるものでパパッと」作る料理である。
いやーそんなことができたらめちゃくちゃかっこいいなと憧れてはいたのだ。だってどう考えても、レシピとか見なくてもふと思いついてなんでも作れちゃう人こそ「上級者」ですよねやっぱり。
で、経験を積んでいけばいつかはそんな日が来るのかもと思っていたんだが、30年経ってもそんな日は来なかった。来る気配もなかった。ってことで結局は際限なく新たなレシピを探し続けるしかなかった。なんだかな……と思わないわけじゃなかったが、そんな日が来ない以上どうすることもできなかった。
ところが「冷蔵庫をやめる」という暴挙を実行に移した結果、突然炎のごとく、いきなりそんな日が来てしまったのだ。
やればできたのである。
いや正確には「できることしかやらなかった」と言うべきか。前回書いた通り、ほぼ味噌汁と漬物しか作らなくなったというだけのこと。でも、その「できること」で十分満足できる自分がいた。ならばそこに何の問題が?
なんだよー、これでよかったんじゃん!
拍子抜けというか瓢箪から駒というか。偶然とはいえ非常にいいことを発見してしまったことに日々ほくほくとせずにはいられない。
家族がいると一汁一菜生活は難しい?
なのでこんな素晴らしい体験を自分一人の胸に留めておくのも申し訳なく、一人でも多くの方に、騙されたと思って是非この「早い、安い、うまい」「しかもゴミが出ない」一汁一菜生活を体験していただきたいと心から思うわけなんだが、これがね、案外不評なんだよね。
息急き切って友達にオススメしようものなら、必ず口を揃えて言われるのが「いやー、私はそれでいいんだけどね……」。子供や家族がいるとそうもいかないのだよと。
ふむ確かにそりゃそうかもしれない。現代においては、日々違うご馳走が食卓にならぶことはもはや常識。そんな中で、来る日も来る日も同じ献立、しかも粗食が食卓に並び続けるとなれば、家庭不和のタネになる確率ほぼ100%なことは私にも理解できる。
とはいえ個人的には、出された食事に文句を言う人には「自分で作ればいいのでは?」と言いたくなってしまいますけどね。
いや何も喧嘩を売っているわけではなく、自分で苦労して作ったものとなれば、たとえ多少の失敗があろうとも、どうにかして「いいところ」を見つけようとするのが人情というものである。それが習慣になれば、自分で作ったものであれ自分以外の誰かが作ったものであれ、何でも美味しくありがたく頂けるようになる。
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