北海道新幹線、道民は「延伸」にどんな未来描くか 開発ラッシュに沸く現地、一方で「負の影響」も

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道央で今なお延伸後のイメージが湧きにくい最大の理由は、「北海道の広さ」かもしれない。札幌では多くの人から「北海道新幹線の道南開業と、札幌や自分との関係を見いだせない」という趣旨の言葉を聞いた。

道央からみれば周縁に位置する道南エリアや、日常的な交流が乏しい東北とのアクセスが新幹線で向上しても、「自分ごと」と感じにくい環境にあるのだろう。一方で、札幌まで新幹線が延伸しても、道東や道北に及ぶメリットもまだ見えにくい。

これまでも、例えば新幹線開業に伴って医師確保に成功したり、高齢者のQOL(生活の質)が向上したり、といった変化の事例はみられる。ただし、このような変化が地元による本格的な調査で確認され、さらには「持続可能な地域づくり」という究極の目的が検討されるケースはまれだ。その遙か手前で、観光客数などに頼る「20世紀型」の皮相的な視点と感覚に基づき、「開業効果」や「新幹線効果」が論じられている例が多いように思われてならない。

「目的」と「手段」見極める必要

このように俯瞰すると、北海道新幹線をめぐり1つの不毛なシナリオが浮かんでくる。並行在来線の廃止や建設工事に伴う住民の不安といった犠牲を払いつつ、いざ開業してみると、市民を含め、大多数の沿線の人々は歓迎すべき理由を見いだせない。しかし、札幌駅や周辺が再開発や都市改造で活況を呈し、延伸は「成功」だったと位置づけられる――。

札幌駅西側の函館本線。北海道新幹線はこの左手前で地上に出てくる=2022年4月(筆者撮影)

市内で長く建設促進運動に携わってきた男性は「認可申請時に活躍した多くの実務者が、すでにリタイアしており、後継者がほとんど見当たらない。街として、着工を実現するために力尽きた格好」と危ぶむ。では、この種のシナリオをどう回避するか。ひとつの案として、「9年後」に向けて、「札幌と北海道の未来」を検討していく「仕組み」をつくり直す営みが考えられる。

北海道新幹線延伸の「目的」は何なのか。そして、「手段」は何なのか。それを論じ、整理する仕組みがつくれれば、新幹線以外のテーマでも、大きな力を発揮しうるのではないか。

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櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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