「10回に1回の確率で当たる」踊らされる人の弱点 元国税調査官が伝授「数字のワナ」を見破る方法

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「日本の人口1億3000万人」もそうですが、私はコンビニの店舗数「約5万5000店舗」という数字も覚えています。こうした数字も頭に入れているのは、世の中の店舗の数などを聞いたときに、比較して実感としてどれくらいかをイメージすることができるからです。

たとえば、日本の歯科診療所の数は6万8051だそうですが(厚生労働省「医療施設動態調査〈2021年3月末概数〉」)、この数字を見ただけでは、多いのか少ないのかいまいちピンときません。しかし、「コンビニは5万5000店舗」という基準の数字を持っていると、そんなに多いのか!となるわけです。

ざっくりした数字でいいので、イメージしやすく、覚えやすい数字を見つけて、基準として持っておきましょう。

国税調査官が習慣にしている「数字力トレーニング」

私は以前、国税局で調査官をしていました。国税調査官は、企業などの財務諸表を見て、不自然な数字を見つけ出すのが得意です。ここでは、国税調査官がやっている「店の売り上げ計算」トレーニングをご紹介します。

国税調査官は、調査に入る前に客を装って対象の店に行くことがよくあります。そこで何がわかるかというと、席数、客単価、回転数です。
飲み食いをしながら、席数が40、客単価は3000円、1日に席が1.5回転……などというふうにざっと見積もります。

『数字が苦手な人のためのいまさら聞けない「数字の読み方」超基本』(アスコム)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

そうすると、1日あたりの売り上げが計算できてしまいます。この店の場合だと40席×3000円×1.5回転=18万円です。飲食店の粗利率は70%が相場ですので、この店の1日の粗利は18万円×70%で計算し、12万6000円になります。年300日営業していたとして、年間売り上げは300日×18万円=5400万円、粗利は5400万円×70%=3780万円とあたりがつきます。

このようにして現場で見積もった売上高や粗利と、決算書の数字とを比べてみるのです。

この手のシミュレーションを習慣にして、日々の生活においても売り上げや利益といった数字に対するセンスを磨くようにすれば、自分の仕事における利益についても、これまでより意識が高くなってくることと思います。ぜひ今日からでも、会社帰りに立ち寄る店があればやってみてください。

毎日の仕事だけでなく、このような日常生活のちょっとしたことでも、ぱっと数字を思い浮かべたり、数字を使って考えていくことができれば、少しずつ「数字力」が身についていきます。そうなれば仕事を語る言葉も変わってきますし、成果も変わっていくはずです。

久保 憂希也 KACHIEL社長

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くぼ ゆきや / Yukiya Kubo

1977年、和歌山県和歌山市生まれ。1995年、慶應義塾大学経済学部入学。2001年、国税専門官第31期として東京国税局に入局。飲食店・医療業・士業・ 芸能人・風俗等の税務調査や、外国人課税事務、確定申告関連事務を担当。 2005年、東証一部上場企業に入社。新規事業・経営企画・事業戦略・M&A・事業提携を担当。在籍した4年弱の間に13のプロジェクトを成し遂げる。2007年、会社全体の営業利益の3分の1(約63億円)を計上する子会社の取締役に就任。グループ全体26社・3,000人の部下を統率する。2008年に独立し、経営全般に関するコンサルティング事業を行う株式会社InspireConsultingを設立。2016年、株式会社KACHIELの代表取締役社長に就任。

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