米国株式市場の「金利騒ぎ」はもうたくさんだ 「金利上昇への懸念」はどこまで深刻なのか?

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やはり、こうした先週末にかけてのアメリカの株価調整は、週末を控えて何らかの大きなポジション調整があったことなどによるものだろう。個別には、ネットフリックス株が19日に「会員数が減少に転じた」と発表し、そこから株価が大幅に下げていた。

このため、ほかの成長期待に支えられてきた銘柄についても、株価は本当に大丈夫なのかとの懸念が投資家の間で抱かれた、という面もあったと推察する。

短期的に騒ぎは続きそうだが、長期的には克服へ

こうした金利騒ぎについて、投資家は「もうたくさんだ」と、うんざりしているだろう。ただ、市場は騒ぐのが「商売」という点もあり、今後も短期的には、金利が上がろうと下がろうと株価がでたらめに上下動し、それに無理やり金利面からの理屈を後付けする、ということが続くだろう。

したがって、当面はドタバタとした相場つきに陥ると達観し、ゆったりと投資することが肝要だと考える。嘆いても仕方がない。

ただ、長期的に展望すると、金利懸念がアメリカの株式市場を揺らすことが徐々に少なくなっていく流れだと見込んでいる。それは、前回の当コラムと内容がダブるところがあるが、次のとおりだ。

まず、昨年11月から今年3月上旬にかけては、市場がまだ十分に景気や企業収益の先行きに自信を抱いていない中、国際商品市況の上振ればかりが進行した。そうしたインフレ懸念を受けて、連銀は11月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始し、12月にはテーパリングの加速とともに、「近いうちの利上げ」を示唆し始めた。

そこで市場は「とくに経済や企業収益が目覚ましくもないのに、インフレに対応するため、連銀が緩和縮小を急いでいる」との見解に支配された。このため、金利上昇が株価の痛手となった。

確かに、3月上旬以降はロシアのウクライナ侵攻に伴い、原油の国際指標であるWTI原油先物価格が一時1バレル=130ドルを超えて肝を冷やした。だが現在は1バレル=100ドル前後でやや落ち着いている。

また、アメリカにおける雇用情勢の強さも、当初は賃金インフレばかりに投資家の目が集まって懸念要因となっていた。ところが今は、賃金の伸びが個人消費を支えるとして、小売売上高の堅調さに関心が向かうようになっている。アメリカの株式市場でも、ビザ、ウォルマート、ホーム・デポ、P&Gなど、個人消費関連銘柄が物色される局面も、時折ではあるが生じている。

次ページ投資家も連銀の高官も「うんざり」
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