高島:以前なら、この時点ではここまでは到達しておきたいな、といった目標があったのですが、会社を続けていくにつれて、ゴールが大事なのか、それまでのプロセスが大事なのかが、正直、わからなくなってきた部分があるのです。それで今は、毎日夢中であることが大事なんじゃないかと考えています。そのためには、行き当たりばったりに進んでいくのがいいのではないかと。夢中でいられるために、「行き当たりばったり力」を上げていきたいと思っています。どうしても、新しいことをやらないと夢中にはならないので。これも、社員には迷惑な話ですね(笑)。
仕事に生きる「行き当たりばったり力」
楠木:最近、行き当たりばったり力が発揮されたケースは何ですか。
高島:2013年から始めたのですが、「東京ハーヴェスト」という収穫祭イベントがあります。日本の食文化には、シェフなどの料理人へのリスペクトはありますが、食材の生産者へのリスペクトがほとんどない。そこで、世の中の生産者に対する意識を高めてもらおうという意図で、農水省や復興庁、東京都を巻き込んで始めました。
楠木:東日本大震災のときにも、いろいろな支援をされましたよね。
高島:被害を受けた東日本の食品産業を、長期的に支援する「東の食の会」を立ち上げました。それから、震災で遺児、孤児となってしまった高校生たちを含む若者のリーダーシップ教育の支援事業である「BEYOND Tomorrow」というプロジェクトも、世界経済フォーラムに参加している若手リーダーのメンバーたちと発足しました。
楠木:若い世代の経営者、特に、ネット企業の経営者というと、プライベートで同世代で集まって飲んだりするのはよくあるようですが、高島さんみたいに、政府や自治体、ほかの年配の経営者を巻き込んでいろんなことをする人というのは、少数派ですよね。
高島:僕は、それほど弁が立つタイプじゃないと思います。また、もっと頭のいい経営者もたくさんいる。僕の役割は、必要な人を集めて実行に移すことだと考えています。
楠木:今回、あらためてじっくりお話を伺って、オイシックスの経営の根っこに渦巻いている好き嫌いがよくわかりました。一言でいうと「大名」(笑)。人間の好き嫌いはそう簡単には変わりませんね。
高島:楠木先生の『「好き嫌い」と経営』を読んで思ったのは、一流の経営者って、バランスがすごく悪いですよね。あの本を読むと、僕ももっとバランスが悪くなきゃダメだと思いました。もっとズレないといけない。
楠木:そこまで読み取ってくれた人は、初めてですよ。高島さんも、もう十分にバランスが悪いと思いますけど(笑)。
(構成:松岡賢治、撮影:尾形文繁)
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