社長はボスでもリーダーでもなく、「大名」 高島宏平 オイシックス代表取締役社長の好き嫌い(下)

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高島:ほとんどの金融機関に断られたので、ほぼすべての金融機関です。なので、キリがないので、途中でメモはやめました。全部覚えてはいますが(笑)。

楠木:イイですね。でも、会社が軌道に乗り出して、今度は、メモに書かれている金融機関のほうからかかわりたいというアプローチがあるわけですよね。そのときは、水に流したのですか?

高島:いえ、流していません(笑)。でも、アプローチをしてくる人は、まったく別の人なので、僕の気持ちが残っているだけです。

楠木:僕は、負けず嫌いではないので、負けず嫌いの気持ちはわかりませんが、根に持つタイプなので、根に持つ気持ちはわかります(笑)。今までのお話を聞いていて感じたのですが、ポジティブな方向にあれば、高い山に登るのはお好きですよね。粘り強く。

1973年神奈川県生まれ。1998年東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了。大学院時代に、自らベンチャー企業を立ち上げ、インターネット事業を手掛ける。1998年大学院修了と同時に、マッキンゼー日本支社に入社。eコマースグループのコアメンバーとして活躍。2000年6月にインターネットを通じて、安全でおいしい食材を一般家庭に宅配するオイシックス株式会社を設立。同社代表取締役社長に就任。2007年世界経済フォーラム(ダボス会議)が選ぶ「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出される。TABLE FOR TWO International理事、東の食の会代表理事を務める。著書に『ライフ・イズ・ベジタブル』(日本経済新聞出版社)がある。

高島:そうですね。ただし、登れると思ってから、登り始めます。そして、いったん登ると決めてからは、ねちっこくいきます。で、苦労をしながらねちっこくいくために、登る前に、この事業の成功に自分が夢中になれるか、自分自身が納得してこの仕事を続けることができるかといったことを、時間をかけて自分と対話します。

楠木:高島さんの熱さと客観的な部分の両面が出ていますよね。

高島:あえて苦労をするというスタンスではないのです。ほとんどが、簡単にうまくいくことがないというだけで。その際、自分が納得していないと、自分自身がもたなくなっちゃうのです。

楠木:若手の企業家の中には、単純にデカいことをしたいという人もいます。デカいことを成し遂げて、名を残したいと思っているようなタイプ。これも、人間的な本能として理解できる。そういう人もほとんど例外なく負けず嫌いなわけですが、高島さんの負けず嫌いとはずいぶん違いますね。

高島:僕の負けず嫌いは、競う対象が他人ではないと思います。自分が納得して登り始めた山の、どれくらいまで登れているのかが大事。自分が目標とした山しか見ていません。

ネットはどう生活スタイルを変えていけるか

楠木:オイシックスをスタートさせて14年、現状の事業でやりがいを感じている部分はどこですか。

高島:新しいサービスを作って、それが世の中に受け入れられていくプロセスについては、非常にやりがいを感じています。こうやればうまくいくのではないか、というノウハウもある程度できてきました。それに伴って、売り上げや利益も伸びてきています。しかし、食に関する問題というのは、時間の経過というか、ライフスタイルの変化でどんどん変わります。ノウハウが通用しないことは、しょっちゅうです。

楠木:会社が大きくなっているときは、みんながハッピーな状態ですよね。売り上げや利益が伸びていくということは、その会社が提供する製品やサービスを、喜んで使っている人が増えていることですからね。最近始めたサービスで、手応えがあったものは何ですか?

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