「お兄さんからすれば数百円かもしれないけど、今はこの数百円を稼ぐのも必死なんよ。沖縄のドライバーの歩合はほとんどが50%を切っていて、私なんか45%だから。でも、一回この仕事をやっちゃうと他の仕事にはつけない。沖縄だと稼げる職種でもあるから……」
タクシー協会のデータによれば、令和2年度の沖縄ドライバーの年間推計収入は253万円だった。客足が多少戻ってきたとはいえ、今の売り上げは平均的に1日2万円前後。よいと言われるドライバーでも3万円を超えるというような話はほとんど聞かなかった。
令和元年の推計額が247万円ということを踏まえれば、数字上では大きな変化があるわけではない。だが、これにはカラクリがある。沖縄本島のタクシー台数は協会に登録されているもので、ハイヤーと合わせて3088台(令和4年2月21日時点)。しかし、コロナ禍で全ドライバーの2割近くが離職し、休業補償の兼ね合いから運休しているタクシーがかなり多い。つまり、タクシーの稼働台数が著しく制限されているというわけだ。
繁華街・松山で捕まえた自身のことを「エースドライバー」と表現する、金城さん(仮名・60代)はこんなことを話していた。
「先日はやっと4万5000円に届いたんよ。今は4万円も売れば、だいたい営業所でトップ。それくらい稼げないからみんな工夫してやっているわけ。コロナの前なんかは、船で港に入ってくる外国人を拾えばだいたいがチャーターしてくれた。
だから自然と売り上げが立った。そのときとのギャップが苦しくて、みんな辞めちゃうわけ。よそから来た人からは『沖縄はタクシーが多い』と言われるけど、今はコロナ前の6割ほどしか動いていない。稼働台数が通常に戻ったとき、4万円なんかとてもじゃないけど売れないと思うよ」
加盟者全体の営業収入がコロナ前から半減
新型コロナの感染拡大以降、沖縄では約10社が事業断念、吸収合併となった。協会調べでは2019年前期(1~7月)に約143億円あった加盟社全体の営業収入は、2021年の同時期には約72億円と半減している。
そんな沖縄のタクシー事情を踏まえて、現状を変えようとする動きも見られている。とくに制服制度や接客については、業界内でもかなり苦労しているという話も聞こえてきた。実際に完全に制服着用を義務づけている丸星交通の常務・石川貴由さんはこう話す。
「沖縄のタクシー業界では多くのものが“整備されてなかった”のは事実です。その1つが制服でしょう。ウチは今では全面的に制服、ネクタイを導入していますが、やはり当初はアレルギー反応があり、従業員の方も反発して多くが辞めていきました。ただし、こういったところから変えていかないとドライバーの意識、ひいては接客向上はつながっていきません」
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