意外と少ない観光客利用「沖縄タクシー」独特実態 ラフな私服で悠々自適なドライバーも多い

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国内有数の観光地ではあるが、実は観光客の利用はそこまで多くないという話をよく耳にした。ドライバーやタクシー会社の話を総合すると、感覚的には地元民7、観光客3程度の割合だという。

少し意外な数字ともとれるが、その理由は近年のレンタカーの発展もあるが、沖縄の県民性にも深く関わりがあるという声があった。沖縄県ハイヤー・タクシー協会・事務局長の津波古修さんが解説する。

「沖縄では交通インフラの関係で、県民の移動手段の約50%近くをタクシーが占めます。バスも時間どおりに来ないことが多いため、中学、高校の通学ですら乗り合いでタクシーを利用することも珍しくないんです。

ゆいレール(電車)駅の利用数もまだまだ少なく、本土のように駅にタクシー乗り場もほぼない。付け待ちできるような場所が、空港と大きな港などごく一部に限定される。そのため流しでタクシーを捕まえることが容易です。ただし、コロナ前に県全体で6000人を超えていたタクシー乗務員さんのうち、1000人以上が業界を辞めました。平均年齢も67歳に届きそうな勢いです。そのため慢性的なドライバー不足が顕在化しています」

県内で最大の保有台数を誇るのが、沖東交通グループだ。企画・営業部の幸頭勇人さんは現在の沖縄本土のタクシー利用についてこうみている。

「3月に入り、少しずつですが人が動き出しました。コロナによる夜の需要の激減で大打撃、加えてインバウンド客が消えたこと、修学旅行がなくなったことも大きかったですね。この2つの観光についてはともに貸し切りハイヤーでの移動が基本で、数字的に大きな比重を占めていたので。

県民性として遅くまで酒を飲み、お店をハシゴするため、従来は夜のタクシーが動いていた。それが今は、昼と夜の売り上げは変わりませんね。もともと短距離移動が多いため、客単価については平均1000~1100円程度。3000円を超えるような利用はかなり少ないです」

かつては接客が問題視されていたことも

かつて沖縄のタクシーは接客が問題視されていた時期がある。どのドライバーに話を聞いても「近年ではずいぶん改善された」というが、他県の水準に慣れた人からすれば、多少の驚きはあるかもしれない。

基本はラフな私服にハンチングなどを被り、悠々自適なスタイルのドライバーが多い。無造作に積み重ねられた漫画や雑誌に、タバコの匂いが漂う車中。このあたりまではある種沖縄ではご愛嬌でもある。

だが、運転のスピードがあまりにも遅いことは気になった。明らかに料金を引き上げようとする意図が感じられ、実際に筆者も3度ほど口論になった。その際にこの道40年だというベテランドライバーは、謝罪をしながらこう私に訴えかけた。

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