双方向クイックシフトシステムではエンジン回転数が2,000回転を上回っていればクラッチ操作、具体的には左手のクラッチレバー操作が不要になり、左足のシフトレバー操作だけでギヤ段が変えられる。
これはものすごく便利な機能といえる。長距離のツーリングでは数百回にも及ぶクラッチ操作が発進/停止時以外、要らなくなるからだ。慣れてくれば、双方向(シフトアップ&ダウン)で作動する利便性を生かして、停止するまでの減速中にニュートラルポジション(2輪車の停止ギヤ位置)にしておけば、クラッチ操作はまさに発進時だけ。
筆者の愛車はクラッチレバーがないDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を搭載しているが、GSX-S1000GTなら同等の扱いやすさと、DCTを上回るシフト操作の楽しみがあると感じた。
150PS/10.7kgf・mを発揮するエンジン特性は「スズキドライブモードセレクター/SDMS」により3段階(A/B/C)で過渡特性を変えられる。いずれも最高出力は同じだが、Aのフルスペックは高速道路などが向いていて、BはAよりもややマイルドで市街地向き、CはBよりもさらに緩やかなスロットル特性で雨天時や渋滞時に有効だった。高速道路では車速を一定に保つ「クルーズコントロールシステム」も大いに役に立った。
最新スペックのGSX-S1000GTは、スズキのお家芸でもある軽量化が生かされ、先が見通せる上体の起きたライディングポジションだから、ビギナーライダーでも緊張せずにライディングが楽しめる。さらに、紹介した数々の電子制御技術によって長距離も快適だから、世界中のベテランライダーからも支持されている。
今回、国内における2輪車の販売状況を俯瞰しながら、モーターサイクルショーの取材を通じて楽しみ方や安全な運転環境について考えた。そしてGSX-S1000GTの試乗を通じて、最新バイクの楽しさも体感することができた。
コロナによって個々の移動が重要視された
2輪車が注目される背景には、コロナ禍により公共交通機関の利用を避けるなどの制限を受ける中で、個々の移動が重要視された点が挙げられる。4輪車よりも燃費数値に優れている点もそれを後押しした。
加えて、細かなニュアンスが伝わりにくいリモート会議の積み重ねから、仕事でたまったストレスを2輪車に乗ることで発散したい、そんな声も多く聴かれた。
2輪車に乗ること(ライディング)は体全身を使うことからスポーツに例えられるが、そこから得られる爽快さと、環境負荷を抑えた個々の移動の両立が、改めて2輪車が見直されている大きな理由であると筆者には感じられた。
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