「京急フェイスの原点」600形の攻めすぎた過去 登場時の座席が独特、運転士「関西系の車両」

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実際に600形について京急社員はどう感じているのか。アンケートをとると「いま思えば京急の主流の顔の原型になったと思うが、正面貫通扉が向かって左端に寄っていて最初は違和感があった」、「デビュー時はシートが水色、デコラ(車内の化粧板)は白でさわやかな客室と感じた」、「正面からアンチクライマー(アーマープレート)と白色がなくなり関西系の車両に思えた」と複数の50代の元運転士。40代元車掌からは「更新後も車端のクロスシートや補助イスなどは関東の他社にはないので個性的と感じた」という声が寄せられた。

更新前の600形。まだ前面に「600」のスリットがない(写真:京急電鉄提供)

現役の30代の運転士らは「京成線内での誤通過防止装置が搭載されておりエアポート快特などの運用についていた印象が強い」、「車両ごとに仕切り扉があり静粛性が向上しているが扉自体は重い」と指摘する。また「運転台のガラスが大きく見やすくてよい」と評判がよい一方で「展望席は京急らしさが出ていてよいと思うが、見られる運転士としてはプレッシャーがかかる」という本音も聞かれる。

反対に後方の場合、展望席は車掌と向かい合わせになるため、乗客としても少し気まずくなるときがある。

600形の「攻めの姿勢」復活?

京急で最新の形式となる新1000形は、2002年にデビューして以降、アルミ車体からステンレス車体へ、などと変化を取り入れながら20年にわたって新造されてきたロングセラーと言える。途中からはステンレス車体にもかかわらず塗装を施し、“京急らしさ”を打ち出している。が、利用者目線からすると車内はロングシートが中心で無難なイメージが強い。

新1000形1890番台で復活した展望席(記者撮影)

そうしたなか、2021年にデビューした新1000形の新造車両(1890番台)は、形式こそ新1000形を踏襲しているが、これまでとは一線を画している。

ロングシートとクロスシートの両方に転換できる座席を初めて導入。車内トイレの設置も同社初で、通勤通学と貸し切り列車などのレジャー需要の両方に対応した。朝の通勤時間帯にオールクロスシートの2100形に連結して座席指定列車としても活躍する。4両編成を5本導入した。

「展望席」も復活させ、その側面の窓は、限られたスペースにわざわざ設けたため異様に縦長の形状になった。600形の座席をツイングルシートと命名したように新造車両を公募で「Le Ciel(ル・シエル)」と名付けた。

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フランス語で「空」の意味で「ロングシートからクロスシート(Long→Cross)に切り替え可能な自動回転式座席の『LC』を『空』のシンボル内に隠し文字として入れ込んだ」(同社)という。空にゆかりがあり、車体番号に「1891-1」などとハイフンを用いるのも600形と同じ。600形登場当時の独創性は、最新の1890番台で呼び起こされたと言えそうだ。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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