ロールモデルは不要、百害あって一利なし 自分のキャリアは、自分でしっかり考えよう

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と、言いますのも、そもそも論として時代の流れが速い状況では柔軟性が求められることもあり、固定的な存在のロールモデルなんぞは百害あって一利なしです。個々人の置かれた状況やキャリアのスタート、あるいは時代が異なれば、やるべき方法論や目指すべきものや難易度は変わってきて当然、という考え方だからです。

また、一個人のみを過度に目標として設定してしまうと、自分自身の「個性がなくなる」だけでなく、結局、その人を追い越せないというジレンマにも、いつかぶち当たると思うのです。

反面教師を定めるのはOK

この私の考えるロールモデル不要論の裏返しでもあるのですが、いただいたご質問に書かれている「成功している方」はおそらく年配の方が多いのではないかと思います。私の経験上もそういったことをおっしゃる方は年配の方が多かった印象ですし、反対に若い方で「ロールモデルを見つけないとダメだ」と血相を変えている方もあまり見かけないような気がします。逆に痛い人を見つけて、その人を「反ロールモデル」、つまり反面教師にしている方はひと昔前より多いように思えます。

これには明確な理由があるように思います。かつては今ほど働き方や仕事、転職に対する価値観が多様化しておらず、ビジネス上のみならずキャリア上でも選択肢がおのずと限られており、目指すべきゴールや方向性が比較的明確であった、ということがあるのではないかと思います。先頭や先を走る人の後ろ姿を見ていれば、まぁ参考にもなったし、自分の将来もなんとなく想像がついた、ということかと思います。そういった人を見つけるという作業も、わざわざ外部に求めるまでもなく、自分の会社の先輩など身近な人から探せばいいので、比較的容易だったのです。つまり、将来の自分を取り巻く環境や自分の身に起こることが、比較的予測しやすいときには、同じような価値観やゴールを持っている人を身近に見つけて、目指すべき姿として参考にしていた、ということなのだと思います。

ところが、それはひと昔前の話です。困ったことにキャリアを取り巻く環境が複雑化するにつれて、ちょっと前を走る他人の「その時の」常識が自分にとっての「現在の」常識であるか否かが不透明になってきている、という事態が起こっているのではないでしょうか。

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