ロシア新司令官「シリアの虐殺者」の背筋凍る正体 魂を売り渡した残虐な男は民間人を標的にする
だがその後、ドボルニコフは劣勢に追い込まれて士気を失った政権側の部隊を立て直した。
さらにロシアの特殊部隊を、アサド政権支援のために参戦したレバノンのイスラム過激派組織ヒズボラと連携させたと、リスターは言う。特殊部隊とヒズボラに傭兵も加えた雑多な助っ人部隊をうまくまとめたおかげで、政権側の攻撃力は一気に高まった。
ドボルニコフはトップダウン方式とは異なる
ドボルニコフはトップダウン方式とは異なる、「自律的な即応部隊」による機動性の高い作戦行動が有効だと、2015年に軍事ジャーナルに寄稿した論文で述べている。
「彼は有能な指揮官であると同時に、非常に想像力豊かだと評価されている」と、イギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマーク・ガレオッティ上級研究員は言う。
ドボルニコフはシリアで残虐な空爆を指揮した。第2の都市アレッポを破壊し尽くし、人道支援物資を運ぶ国連機関の車列を爆撃して、北西部イドリブ県ではほぼ毎日、学校や病院を攻撃した。
新しい司令官の登場とともに、ロシアの軍事作戦はさらに残忍な段階に進むと予想されるが、それはドボルニコフという人物に直接、関係するわけではないかもしれない。
「ドボルニコフがある種のソシオパス(社会病質者)かどうかということではなく、ロシアの戦い方の問題だ」と、ガレオッティは指摘する。
ロシア軍はドンバスの戦況を打開するために大規模な地上作戦に向けて再編成を行い、一部の部隊を補給と再装備のためにいったんロシア西部とベラルーシに移動させている。
ただし、ドボルニコフの登場によって指揮系統と兵站の問題が直ちに解決することはないと、西側諸国はみている。
「最大の課題は、戦闘で大きな痛手を負ったばらばらの部隊を、複数の戦線を含む攻撃力として統合することだ」と、コフマンは指摘する。
「そのためにどのような指揮系統を確立しているのか、現時点では分からない」