ロシア新司令官「シリアの虐殺者」の背筋凍る正体 魂を売り渡した残虐な男は民間人を標的にする

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西側の情報当局によると、この1カ月余りの戦闘で、ウクライナで戦うロシア軍の大隊戦術群の4分の1近くが戦闘不能に陥っているとみられる。

ドンバス地方と周辺には20の大隊戦術群が動員されているが、11日の時点でウクライナ国内にいるのは半分強だと、先の国防総省高官は語る。

鉄道駅の避難民を攻撃

8日にロシア軍は東部ドネツク州のウクライナ支配地域にあるクラマトルスクの鉄道駅を弾道ミサイルで攻撃し、50人以上が死亡した。この地域では近く戦闘が激化するといわれており、数千人が避難のため駅のホームに集まっていた。

この攻撃からロシア軍の戦略の輪郭が見えてきたと、米当局者は言う。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は11日、ロシア軍が包囲を続けている南東部の港湾都市マリウポリで、人道支援物資が断たれて「数万人の」市民が殺されていると訴えた。

「ロシア軍の卑劣さと残虐さが底なしであることは明らかだ」と、先の国防総省高官は11日に記者団に語った。

「非常に恐ろしい結果になる可能性も覚悟している」

ロシアがドンバスに注力するのは、停戦協議と戦闘を同時に行うという前例を踏まえているのではないかと、専門家は考えている。

シリアでロシアはアサド側の軍勢に国土の大部分を奪還させようとしたが、失敗に終わり、ドボルニコフは分断攻略を試みた。

これはロシアが交渉を通じてシリア領内に4つの緊張緩和地帯を設け、シリア軍がそれを1つずつ──その多くは化学兵器を使って──狙い撃ちするというものだった。

「シリア全土に及ぶ軍事行動は壊滅的に失敗した。そこで、1つずつ地域を占領していき、外交的・地政学的な既成事実をつくり出そうとした」と、リスターは言う。

ロシアの戦争が民間人を危険にさらすことは、ウクライナでも既に例外ではない。そしてドボルニコフは、それを当たり前のことにしてしまうと、彼の残忍なスタイルをよく知る元米政府高官は言う。

元米国防次官補代理(中東担当)でCIA準軍事作戦将校も務めたミック・マルロイは次のように語る。

「民間人を標的にすることを、容認するだけでなく実際に促進するという点で、彼は一貫している。(プーチンは)魂を売っても構わないという将軍を探す必要はない。この男は既に魂を売り渡している」

From Foreign Policy Magazine

執筆者:ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)、エイミー・マッキノン(フォーリン・ポリシー誌記者)

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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