実はスギと違う?「ヒノキ花粉症」への漢方的対処 目のかゆみや咳がひどい人は一度チェックを

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最後に、冷えが原因となるスギ花粉の漢方治療についてもご紹介します。
一般的に冷えが原因の場合、次のような症状が出ます。

<冷えによる症状>
・薄くて量が多い鼻水
・体、手足などの冷え(寒い日に悪化する)
・むくみ

スギ花粉症では「水毒」が生じやすい

漢方で薄い鼻水は、体内の水分バランスが崩れた結果で生じる「水毒(すいどく)」によるものと捉えています。水毒とは処理しきれない水が体の特定の部分に溜まった状態をいい、行き場を失った水が鼻水や痰となるのです。鼻づまりも鼻の粘膜に水が溜まって膨張した結果、起こります。

春は冬には凍っていた病が溶けてあふれ出す季節です。花粉症で顔や足がむくむ人も多く、これらの症状はまさに水毒の表れです。

水毒に対しては、水分の偏りを解消して水分バランスを整える利水作用のある漢方薬を用います。西洋医学にも利尿剤がありますが、漢方の利水剤のように水の偏在を正す働きをする薬剤はありません。

利尿作用のある代表的な漢方薬が、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)です。小青竜湯は、体力が中等度またはやや虚弱で、水のような痰を伴う咳や鼻水を訴える人に使われます。体力がなく冷えが強い人には、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)が使用されます。

水毒を作らないような養生も大切です。水分を摂りすぎれば新たに水毒ができるため、せっかくの利水剤の効果も薄くなります。このほかにも、砂糖入りの甘いものや冷たいもの、果物の摂りすぎも体に水を溜め込むので、控えたほうがよいでしょう。

これまで見てきたように、漢方では「花粉症」という病名だけで同じ処方を出すことはありません。同じ花粉症でも、正反対の働きで起こっている場合があるためです。熱がこもったヒノキ花粉症の患者さんが、温める作用のある小青竜湯を服用すれば、逆に症状が悪化してしまいかねません。実際、そのような理由で相談に来られる患者さんもいます。

スギとヒノキ。同じ花粉症でも漢方では違うものと捉えること、ぜひ覚えておいて、これからの治療、来年の治療に役立ててもらいたいものです。

平地 治美 薬剤師、鍼灸師。 和光鍼灸治療院・漢方薬局代表

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ひらぢ はるみ / Harumi Hiraji

東洋鍼灸専門学校非常勤講師、日本東洋医学会代議員。朝日カルチャーセンター、津田沼カルチャーセンターなどで漢方関連の講座を担当。明治薬科大学薬学部卒業後、漢方薬局勤務を経て、東洋鍼灸専門学校に入学。漢方治療の大家である寺師睦宗氏に漢方を、石原克己氏に鍼灸を、クリシュナU.K氏にアーユルヴェーダ医学を学ぶ。著書に『げきポカ』(ダイヤモンド社)、『舌を見る・動かす・食べるで健康になる』(日貿出版)など。You tube「平地治美・漢方チャンネル」も開設。ブログ「平地治美の漢方ブログ」。

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