理想をいえば、花粉症の症状が表れる数カ月前から本治で体調を整えて、症状の出にくい体づくりをし、いざシーズンになったら標治で症状を抑えていきたいところですが、今はすでに花粉症シーズン真っ只中で本治のフェーズではないため、標治を中心に行うことになります。
では、その標治ではどんな治療をするのでしょう。
漢方では花粉症の症状である鼻水やくしゃみ、皮膚や目のかゆみは、すべて五臓六腑の1つ「肺」に属する病によって起こると捉えます。肺は胃腸との働きと深い関係があるので、症状の原因が冷えによるものであれば温め、熱であれば冷やす治療を用います。例外はありますが、傾向としてスギ花粉は「冷」、ヒノキ花粉は「熱」による症状が多いようです。
ヒノキ花粉症で多い「熱がこもっているタイプ」の代表的な症状は次の通りで、炎症症状が強く出るのが特徴です。
<熱による症状>
・熱感やほてり、炎症症状が強い
・黄色く濃い痰や鼻水、目やにが出る
・温めると悪化する
・のど、目のかゆみ、耳のかゆみが強い
・のどの奥がイガイガする
これを見ると、目のかゆみや皮膚の乾燥とかゆみ、喉などの粘膜の炎症が目立ちます。
話は逸れますが、過去にみた患者さんに尿道の粘膜に花粉症の症状が出て、膀胱炎を起こしていた方がいました。この方は膀胱炎の薬を飲んでも一向に治らなかったのですが、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)という花粉症に効く漢方薬が功を奏し、膀胱炎が治ったのです。
この方は例外ですが、一般的に熱がこもっているタイプにはこもった熱を冷ます漢方薬を使います。例えば、目のかゆみやむくみには越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)がよく、余分な水分と熱を取ることで目のかゆみをはじめとする炎症症状の改善が期待できます。
トウガラシやニンニクなどは控えめに
養生では、熱による炎症を悪化させる香辛料(トウガラシやニンニクなど)の摂りすぎには気をつけましょう。揚げものや肉、甘いものや味が濃いものも控えたほうがよいです。飲酒も体に熱をこもらせるので控えめに。反対におすすめしたいのは、さっぱりした味付けのもの、春の魚などを中心にした献立です。
睡眠不足や過労も、熱による炎症症状を悪化させるので注意しましょう。睡眠をしっかりとり、疲れをとるために、ミントのハーブティやアロマオイルを入浴剤として使うのもすすめられます。
本治でも標治でも使える点鼻薬の作り方を紹介します。
(材料)
太白ごま油(スーパーなどで売っている透明で無臭のもの) 100ml
ターメリック(ウコン) 小さじ1
(作り方)
①ごま油をなべに入れて弱火にかけ、100度以上になったら火を止めターメリックを混ぜる。
②冷ましてからふきん、またはキッチンペーパーで濾す。
(使い方)
あおむけに寝て左右の鼻にスポイトやストローで5~10滴程度たらし、5~10分浸み込ませる。
のどに降りてきたオイルは飲み込まず口にためておき、最後に吐き出す。
終わったら鼻をかみ、うがいをする。出てきた痰や鼻水は飲み込まないよう注意。
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