「電気代が200円超え!」とびっくりする最強の人 予測不可能な「奪われる時代」を生き抜くスキル

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でもことここにいたり、事態はもっと切迫してるんじゃないかという気がしている。お金であれモノであれ「なくても平気」という体験を、小さいことからコツコツ積み上げていくことは、この時代を生きるために、万人にとって何より必要なスキルなんじゃないか。そんなことをしみじみと思ったので、今こそ書いておこうかと思った次第である。

お金だけじゃなくエネルギーも奪われる

ちなみに、例の「電気ご使用量のお知らせ」を見て、実は電気代が200円を超えたこと以上にビックリしたことがある。

ふと末尾の但し書きに目をやると、驚くべきことが書かれていたのだ。なんと昨年の同月よりも電気の使用量が64%減っているというのである! 64%ですよ! すごくないですか? 

ちなみに昨年3月の使用量は3キロワットアワー、今年3月は1キロワットアワーらしい。きっとどっちも普通の人から見たらとんでもない数字なんでしょうが、もはやそれすらもよくわからない。

ちなみに、私のレベルになると使用量がどれだけ減ろうが電気代はまったく変わらない。というのも、私の契約(5アンペア)では基本料金はゼロなのだが、最低料金(電気をまったく使わなくても支払わねばならないお金)というものがありまして、私が毎月支払っているのはこの「最低料金」のみなのである。つまりは私はこの6年というもの、この最低料金の範囲内に収まる電気しか使わずに生活しているのである。

なので具体的な使用量の増減にはまったく関心を払ってこなかったんだが、それがこれほど減少していたとは! 別に節約したつもりはまったくないので思い当たるフシもないのだが、よくよく考えると、話題の新書『スマホ脳』を読んで恐ろしくなり、スマホを持ち歩かなくなったせいで充電回数が減ったことが影響しているのかもしれない。

にしてもすごい数字だ。いやほんと、ここまでくると、自分で言うのもなんだが、私、世界的にも相当な「偉業」を達成しているのではないだろうか? 何しろここまでやっても、フツーに、文明的に、しかも楽に楽しく都会生活を営んでいるのである。もう、電気がまったくなくても普通にやっていけるんじゃないか? ま、パソコンで原稿が送れないのでこのコラムを書くことはできなくなるわけですが、生活においてはほとんどどうということもない気がする。

これからは、お金だけじゃなくて、エネルギーも「奪われる時代」である。これはおそらく、お金より深刻な問題だ。われらはこれまでもっぱら、災害でライフラインがズタズタになった時になって初めて自分の「エネルギー依存」を自覚してきた。

電気が来なくなったというただそれだけで、日々の暮らしの「当たり前」がことごとく覆されることに驚かない人はいないだろう。お金は無くなってもすぐに死ぬことはないけれど、エネルギーに依存していると、それが途絶えるとたちまち生命の危機に直面しかねないのである。

でもこれは、今や災害における被災地だけの問題ではなくなってきている。先日、地震による火力発電の停止に気温の低下が相まって、関東と東北で緊急の節電要請がされたことは記憶に新しいところだ。

さらにこの度の戦争で、エネルギー資源をロシアに依存していることのリスクに世界の人が直面することになった。遠くからやってくるエネルギーに依存しきって暮らすことがいかに不安定で危険な行為であるかを考えずにはいられない時代がやってきたのである。

そう思うと、お金にもエネルギーにも依存していない私は、実はものすごく「強い」地点まで来たのだと感慨深く思う。

でもそんな私とて、元々はズブズブのエネルギー依存、金依存の人生だったのだ。人間、やればできるのである。今やらずしていつやるか。

稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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