物事の本質は「2次関数」学ぶと理解が早くなる訳 私立文系はとくに知ってほしい「数学」の重要性

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2019年に経済産業省が出した報告書「数理資本主義の時代」には次のような衝撃的な言葉がつづられています。

「この第四次産業革命を主導し、さらにその限界すら超えて先へと進むために、どうしても欠かすことのできない科学が、三つある。それは、第一に数学、第二に数学、そして第三に数学である!」

また、日本数学会理事長を務められた小谷元子東北大学教授も読売新聞のインタビューにこう答えています。

「2010年頃から、米国の職業案内のウェブサイトで、人気職業の1位や2位に数学者が入るようになった。新産業の基盤はITであり、数学の知識を活用できる人が重要だとわかっていたのだろう。私も日本もそのことに気付くのが遅れた」(読売新聞2019年4月12日付朝刊)

AIとは、人間が行う学習と同等の「学習」をコンピュータに行わせる機械学習を応用した技術のことをいいます。いうまでもなく機械学習でコンピュータが読み込むデータはすべて数字です。人の好みや感情も含めてすべてが数値化されます。現代は、人類史上最も数字がモノをいう時代だといっていいでしょう。ITの技術が進歩し、機械学習のニーズが高まることによって、数字が判断と予測の基準となる世界が急速に拡がっています。

数学こそ真のグローバル言語

私のかつての教え子が大学卒業後にアメリカのビジネススクールに留学したときのことを次のように話してくれたことがあります。

「とくに経済学の授業では数学が共通語でした。僕は、英語はあまり得意ではありませんでしたが、そのことをハンデに思うことはなかったです。実際、僕と台湾出身の学生が2人で学年トップを取ったこともありました」

アメリカを代表するビジネス誌『フォーチュン』が年に1度発表する「Fortune500」には、全米の企業売り上げ上位500社がランキングされますが、そのうち約40%は移民1世か2世によって創業された企業であることをご存じでしょうか。テクノロジー関連の企業に限ると、実に60%の企業が移民によって創られたそうです。

確かにアップルの故スティーブ・ジョブズの父はシリア移民でしたし、グーグルのセルゲイ・ブリンはロシア出身、アマゾンのジェフ・ベゾスはキューバ移民2世、テスラのイーロン・マスクは南アフリカ共和国出身です。移民やその2世たちが活躍するアメリカの状況を見ていると、グローバル社会の共通語は英語というよりもむしろ、数学と数学を通して身につく論理的思考力に違いないと私は思います。

育ってきた環境・文化・常識が違う人が世界中から集まる場においては、数字を根拠に物事の全体像を俯瞰して判断し、数字や数式を使って情報を正確かつ具体的に伝えなければ、話を真剣に聞いてもらうことはできないでしょう。

ビジネス界ではよく「起業するとき、0を1にするのは直感やセンスだが、1を10にし100にするのは数理である」といわれます。新しく生まれたアイデアに対して「技術的に可能かどうか」「価値があるかどうか」などを数字で説明できたり、他人を論理的に説得できたりする能力があってはじめて、資金を集め、周囲を巻き込むことができるからです。

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