ウクライナでの戦況が膠着するなか、2000km離れたフランスにも連日、難民が押し寄せている。
エマニュエル・マクロン大統領は10万人の難民受け入れを表明しており、3月27日現在、フランスに到着したウクライナ難民は約3万人。その大部分が女性と子どもたちだ。
戦火を逃れ、フランスの首都パリにたどり着いた人々は実際、どのように受け入れられているのか。ある日突然、難民となった子どもたちはこの先どうなるのか。現地でその様子を探った。
幼い娘ふたりを連れて祖国を脱出したイリナ
「私たちは幸いバスに乗れましたが、窓の外には、徒歩で移動しなければならない人たちがたくさんいました。寒いなか、みんな、赤ちゃんや子どもを腕に抱いて……」
4歳と10歳の娘を連れ、ウクライナ西部の町テルノピリからフランスへ避難してきたイリナさん(39歳)は、あふれる涙で言葉を詰まらせた。
「つらいです。でもウクライナに残っている人たちはもっとつらい。食べるものも住むところもないのだから。本当に悲劇です」
イリナさんがウクライナを脱出したのは、ロシアによる軍事侵攻開始から1週間後の3月3日。バスで丸2日かけてフランスの国境にたどり着いたという。
欧州連合(EU)は3月3日、難民申請なしに滞在許可証を発行する「一時保護」の緊急措置を取ることで合意。同時に、パリでは、ウクライナ難民専用の支援センターが立ち上がった。
この支援センターは、寝泊りをするための「避難所」とは別に設けられた施設で、宿泊施設などの情報提供に加え、滞在許可証の発行、医師による診察や精神カウンセリングなど、一次的に必要なサポートを提供する場所だ。フランス政府とパリ市、NGO団体が連携し、連日、数百人規模の難民を受け入れている。
筆者はNGOを通じて、この難民支援センターの取材を申し込んだが、すぐには認められず、別途、政府の許可を得て、フランスメディアなどとともに特別に現地を取材した。
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