プーチンの核攻撃「以前よりありえる」理由 ロシア軍は「核戦争への移行」を訓練している
冷戦中に作られた大型核兵器の破壊力は、広島を壊滅させたアメリカの原爆をはるかに上回る。アメリカとロシアが行った最大の核実験は、それぞれ広島原爆の1000倍と3000倍の規模。どちらも相互確証破壊、すなわち核攻撃を行えば巨大な報復によって互いが確実に破滅するという抑止理論が土台となっていた。核使用の心理的ハードルは極めて高く、核攻撃はありえないと考えられるようになっていた。
ところが、ロシアとアメリカは現在、広島の原爆よりもずっと破壊力の小さい核兵器を保有しており、核使用のハードルはある意味で下がっている。核攻撃は以前よりも「ありえる」シナリオになったわけだ。
こうした小型核兵器に対する懸念は、ロシア大統領ウラジーミル・プーチンがウクライナ戦争で核戦力をちらつかせ、ロシアの核部隊を臨戦態勢に置き、原子力発電所への危険な攻撃を軍に命じたことで急激に高まっている。危惧されているのは、プーチンが追い詰められたと感じて小型核兵器の使用に踏み切る可能性だ。そうなれば、77年前の広島と長崎以来のタブーが破られることになる。
「核兵器は使用するもの」がロシアの前提
ロシア軍は通常戦争から核戦争への移行を長きにわたって訓練してきたと軍事アナリストらは指摘する。中でも核は地上戦での劣勢を巻き返す手段と位置づけられてきた。
専門家らによると、核兵器を世界で最も多く保有するロシア軍は、紛争をエスカレートさせる多彩なオプションを探ってきたため、プーチンはさまざまな選択肢を手にしている状況だという。