プーチンの核攻撃「以前よりありえる」理由 ロシア軍は「核戦争への移行」を訓練している

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ハンブルク大学とカーネギー国際平和基金に所属する核の専門家ウルリッヒ・キューンは「確率は低いが、危険は増している」と語った。

キューンによると、プーチンは敵軍ではなく、人の住んでいない地域に核兵器を撃ち込んでくる可能性があるという。2018年の研究でキューンは、ロシアが恐るべき攻撃が迫っていると威嚇するために、北海の遠隔地で核兵器を炸裂させる危機のシナリオを提示している。

「こういったことを語るのは嫌なものだが、そうした可能性が出てきていることは考えておかなくてはならない」とキューンは取材に語った。

アメリカ政府も、プーチンがこれから核に関連した動きをさらに強めてくるとみている。アメリカ国防情報局(DIA)長官で中将のスコット・ベリエは17日、下院軍事委員会に対し次のように述べた。戦争とその影響でロシアが弱体化する中、ロシア政府は「西側諸国に警告を発し、力を誇示する手段として、核抑止力に一段と頼る」可能性が高い——。

かつてアメリカ空軍で中将を務め、バラク・オバマ政権で国家情報長官を任されたジェームズ・クラッパー・ジュニアは、冷戦終結後に軍の統制が乱れたことをきっかけにロシア政府は核兵器使用のハードルを引き下げたと話した。クラッパーによると、現在のロシアでは、核兵器は使用がありえないものではなく、使用する兵器だと見なされるようになっている。

核兵器は小型でも被害は激烈

「彼らは(核の危険など)おかまいなしだ」。ロシア軍が3月上旬にザポリージャ原子力発電所を攻撃し、放射性物質を飛散させる危険を冒したことについて、クラッパーはこう述べた。ザポリージャ原発は、ウクライナだけでなく、ヨーロッパでも最大の原発だ。「彼らは進んで(原発を)攻撃した。これを見れば、ロシアがやりたい放題の態度でいることがわかる。ロシアは、核兵器についてわれわれが行っているような線引きなどしない」

プーチンは2月下旬、ロシアの核部隊を「特別戦闘準備態勢」に置くと発表した。ロシアの核兵器について長年研究してきたパヴェル・ポドヴィッグによると、軍の指揮系統が核兵器使用の命令を受ける可能性を踏まえた態勢に移行したのはほぼ間違いない。

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