プーチンの核攻撃「以前よりありえる」理由 ロシア軍は「核戦争への移行」を訓練している

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これに対しアメリカがヨーロッパに配備しているのは約100発。国内での政策論争やNATOの同盟国に核兵器を配備する政治的な難しさから、この数にとどまっている。NATOの同盟国では、核兵器の配備に対する国民的な抵抗が強く、反対運動も少なくない。

ロシアは「エスカレート・トゥ・ディエスカレート」(戦況をあおって収める)という核戦争ドクトリンを掲げていることが知られている。ロシア軍が劣勢となった場合には核兵器を使用して敵に圧倒的な衝撃を与え、撤退または降伏に追い込む、という戦術だ。ロシアは軍事演習で、こうした戦術の訓練を何度となく繰り返してきた。

これは1990年代には「防衛のための演習」だったが、ロシア軍がかつての力をいくぶん取り戻した2000年代には「攻撃のための演習」に変化したと、ハンブルク大学のキューンは指摘する。

それと並行して、ロシアは小型弾頭を含む核兵器の近代化に着手した。

ヨーロッパ全土が射程圏

刷新された戦力の中でも要の役割を担っているのが、2005年に初配備された弾道ミサイル「イスカンデルM」だ。移動式の発射システムから2発のミサイルを約300マイル(約480キロメートル)先にまで撃ち込むことができ、従来型の弾頭のほか、核弾頭も搭載可能となっている。ロシア発表の数字によれば、こうしたミサイルを使った最小の核兵器の威力は、広島原爆のおよそ3分の1になるという。

衛星画像からはウクライナに侵攻する前の段階で、ロシア軍がベラルーシおよびウクライナ東部と接するロシア国内にイスカンデMの発射システムを配備していたことが確認されている。

ソ連時代に軍備管理条約の交渉を行ったロシアの元外交官ニコライ・ソコフは、核弾頭は巡航ミサイルにも搭載可能だと話した。戦闘機、軍艦、または地上から発射され、地形に沿って低い高度を飛行し、敵のレーダーをかいくぐるのが巡航ミサイルだ。

ロシア国内から「ヨーロッパ全土を射程に収められる」とソコフは言った。そこにはイギリスも含まれる。

(執筆:William J. Broad記者)
(C)2022 The New York Times Company

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