パリに現れた巨大な難民支援センター
エッフェル塔から車で15分ほど、パリ南西部、ポルト・ド・ヴェルサイユにある、フランス最大級の国際展示場。通常であればさまざまな見本市が開催される、5000㎡ものホールが急遽、難民支援センターと化した。この支援センターは平日も週末も休みなく、連日難民を受け入れており、開館時間の午前9時には、手続きや情報を求める人たちで200人ほどの行列ができる。
「70年代にはアジアから、2015年にはシリアやアフガニスタンからの難民も受け入れてきましたが、ここまで多くの難民を一度に受け入れるのは今回が初めてです」
支援センターの運営に携わる団体のひとつで、50年の難民支援実績を持つNGO団体、フランス・テール・ダジル(France Terre d'Asile)でディレクターを務めるエレンさんは驚きを隠せない。
エマニュエル・マクロン大統領は10万人のウクライナ難民の受け入れを表明しているが、この人数は、2021年の1年間で新規に登録された難民申請者数10万3790人(欧州委員会データ)に匹敵する。ロシアの軍事侵攻開始からわずか1カ月間で、すでに3万人がフランスに逃れてきたことを考えると、今回の難民の数が尋常でないことがわかる。
健康保険や就労など異例の支援策
難民のなかには、フランスに留まることを希望する人もいれば、さらに南下し、スペインやポルトガルまで移動したいという人もいる。
前者の場合は、宿泊施設や住居を見つけるためのサポートを、後者の場合は、最終目的地まで行けるよう、鉄道会社と連携してTGV(フランスの高速鉄道)などを無料で利用できるようにしている。
フランスに留まることを希望する人には、フランス政府が臨時の滞在許可証を発行することになっているが、申請手続きをする窓口の前にはパイプ椅子が所狭しと並び、順番を待つ人々の顔には疲労感がにじむ。
臨時の滞在許可証が発行されると、原則、大人一人当たり月額約400ユーロの手当てが支給され、医療が必要な場合は健康保険も適用される。銀行口座を開設し、フランスで仕事をすることも可能だ。
もちろん、言葉の通じない土地で、幼い子どもを抱えながら母親が新たな仕事を探すことは決して容易ではないが、通常、外国人には就労を認めていないビザも多いなかで異例の措置といえる。臨時の滞在許可証は6カ月間有効で、最大3年まで更新できるという。
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