「ロシア事業から撤退する」アメリカ企業の思惑 消費者は「安さ」よりも「信頼」を重視している
ロシアから380社のアメリカ企業が撤退
ロシアが、2022年2月24日にウクライナに対する軍事侵攻を開始して、まもなく1ヵ月が過ぎようとしている。これを受け、各国が対ロシア制裁を強化しているが、数々の主要なアメリカ企業がいち早くロシア関連事業の停止や撤退を表明しているのは、すでにあちこちで報道されているとおりだ。
このアメリカ企業の急速な撤退は、3月7日に米ブリンケン国務長官がリトアニアのランズベルギス外相との共同記者会見の際、“exodus”(エクソダス=大量の国外脱出の意:旧約聖書の『出エジプト記』になぞらえたもの)という語を用いたほどである。
実際、ロシア事業から撤退したアメリカ企業は、イェール大学経営大学院の調査によれば、少なくとも380社はあるだろうといわれている。
多くのアメリカ企業にとって、ロシアは決して巨大市場ではない。しかし、一国の市場から退くという意思決定は、それなりに重い。これが非常に素早く行われた背景には、もちろん主要国による対ロシア制裁の影響が大きいが、それに加えて消費者感情が無視できないものとなっているからだ。
アメリカ内で、ロシア事業を継続しようとしている(あるいは、そう見えている)企業に対する批判が非常に高まっている中、「撤退する」という判断の遅さが自分たちのレピュテーションリスクにつながることを、企業幹部らは十分に認識している。
リスクインテリジェンス企業の調査によると、80%以上のアメリカ企業幹部が「より広範な社会的関心を無視することはできず、また無視することで“財務上のマイナス影響”を引き起こす可能性がある」と考えている。
それほどまでにアメリカ企業に対する消費者の影響力は強い。特にソーシャルメディアの影響力が強くなったここ10年は、それが非常に顕著に表れている。
昨年、アメリカのPRエージェンシーが行った調査によれば、同国消費者の6割以上は「自分には、企業やブランドに変化を迫る力がある」と考えている。
アメリカ内のメディアが「ロシア事業からの撤退を決定した企業」と「いまだに事業を継続している企業」を、頻繁にかつ事細かに報じている中、ちょっとした判断ミスが命取りになる状況だ。
実際、撤退か継続かの判断が遅れたことにより、ソーシャルメディア上で大きな不買運動が起こった結果、大急ぎで撤退に向けて舵を切ったアメリカ企業も少なくない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら