「ロシア事業から撤退する」アメリカ企業の思惑 消費者は「安さ」よりも「信頼」を重視している

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このように、消費者の影響力がますます強まっているアメリカだが、この5年ほどの間で、消費者が企業を評価する観点に、大きな変化が見られるようになっている。

たとえば、毎年アメリカ企業のCMO(最高マーケティング責任者)を対象に実施されている「The CMO Survey」という調査によれば、「消費者が企業に対して重視しているものは何ですか?」という質問に対して、2009年に最も多くの回答を集めたのが「値段・価格」だったのに対し、2019年は、それが「信頼性」へと変わっている。

信頼できない企業からは物を買いたくない、ということだ。なお「値段・価格」は10年間で「信頼性」「商品の品質」「良いサービス」に続いて4番目と、大きく順位を下げる結果となっている。

この10年ほどで消費者は企業に対して、安さよりも信頼を求めるようになってきたといえるし、その信頼は社会に対して、どう向き合っているかで評価されている。前述のPRエージェンシーが行った調査でも、アメリカの消費者の約半数が「社会を改善するために、企業やブランドに対して自分たちの力を発揮したい」と回答している。

今、企業が求められている姿勢とは?

こういった動きは、特にコロナ禍を経て、より顕著なものとなっている。今から2年前、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、アメリカの消費者は企業に対して「3R」を求め、これにどう対応するかで企業を評価する動きが強まった。

ここで言う3Rとは、環境配慮や廃棄物対策に関するキーワード、つまり「Reduce(減らす)」「Reuse(繰り返し使う)」「Recycle(資源として再利用する)」のことではない。

パンデミック以降、求められている3Rとは「Respond(反応する)」「Relief(助ける)」「Redeployment(再配置)」だ。

つまり、感染症の拡大によって引き起こされた世の中の混乱に対し、素早く反応(Respond)し、感染症に罹ってしまった患者や、その治療に奔走する医療従事者、さらに、その周辺の人々を助け(Relief)、さらに自社の設備や商品などを(例えば工場の生産ラインをマスクや消毒用アルコールなど、可及的速やかに供給すべきものを生産するために)、再配置(Redeployment)し、社会に貢献する企業が高く評価されるようになっている。

これまで触れてきたようにアメリカ企業にとって、自社が消費者からどのように評価されているかといった、いわゆるコーポレートレピュテーションはもっとも重要な課題のひとつだと言っていいだろう。

企業によるソーシャルメディアのモニタリングに対する(人員や設備、ツール等に対する)投資がパンデミックを境に40%以上増加したのも、こういった動きを裏付けるようなものとして考えられる。

アメリカ企業のマーケターに対する調査によれば、企業によるソーシャルメディアのモニタリングの需要が大きく高まった背景には、パンデミックによる、消費者の購買行動の急速なデジタル化に伴い、消費者のコミュニケーションが、これまで以上にソーシャルメディアにシフトしたという理由が挙げられているが、それだけではない。

常日頃からソーシャルメディア上で交わされる消費者の会話をチェックし、何か自分たちで行動を起こすべき状況になった際に、いち早く反応して「私たちはつねにみなさまに寄り添っています」という姿勢をはっきりと見せるためという理由も伴っているという。それだけ企業は、消費者からの“評価”をつねに気にし、自社の評判を下げないよう、懸命な努力を続けているのだ。

熊村 剛輔 セールスフォース・ジャパン DX ビジネスコンサルティング ディレクター

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くまむら ごうすけ / Gosuke Kumamura

1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、大手ソフトウエア企業のウェブサイト統括とソーシャルメディアマーケティング戦略をリード。その後広報代理店のリードデジタルストラテジストおよびアパレルブランドにおいて日本・韓国のデジタルマーケティングを統括後、クラウドサービスベンダーにてエバンジェリストとなり現在に至る。

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