ウクライナ難民、「女性と子ども」が直面する困難 受け入れ10万人表明、フランスの支援の実際

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(写真:筆者撮影)

難民にとって何よりもまず確保したいのが、落ち着いて生活できる場所だろう。避難所はあくまでも一時的に凌ぐ場所であり、欧州各国と同様にフランスも、自治体や企業、市民らの協力のもと、国をあげて難民の住居確保に奔走している。

政府が立ち上げた公式ポータルサイトJe m’engage pour Ukraine(私はウクライナを支援します)は、通訳のボランティアや住居の提供を申し出ることができる、ウクライナ難民支援のためのプラットフォームだ。

アパルトマンの一室や田舎のセカンドハウスを提供する個人も少なくなく、エマニュエル・ヴァルゴン住宅担当相は、3月27日現在、市民から9万件もの住宅提供の申し出があったことを明らかにした。1万5千人がすでに一般の住宅や宿泊施設に入居しており、いずれも無償、あるいは軽い負担で滞在できるという。

ある日突然、難民となった子どもたち

18歳から60歳のウクライナ人男性は国外に出られないため、難民のほとんどは女性と子どもたちだ。ユネスコによると、2月24日以降、ウクライナから国外に避難した子どもたちは3月24日時点で150万人に上るという。ある日突然、住み慣れた家や学校を追われ、愛する家族と引き裂かれた子どもたちの苦痛は想像するに余りある。

(写真:筆者撮影)

パリの支援センターの一角には、子どもたちのためのプレイエリアも設けられており、カラフルなフロアマットの上には、ぬいぐるみやブロックなどさまざまなおもちゃが並ぶ。壁には子どもたちが描いた絵が、そのまわりにはウクライナの国旗の青と黄色のリボンが飾られており、無機質なセンターの中でも、わずかながら心が和む空間だ。

筆者が訪れた際も、パリ市から派遣された職員と一緒に、子どもたちがカードゲームなどをして遊んでいた。一見すると、パリの街中で見かける子どもたちと変わらないように見えたが、実際は違うという。プレイエリアで難民の子どもをみている保育士の女性は「子どもたちは恐怖心を抱え、心を閉ざしています。(サポートするうえでも)それが一番難しい」と打ち明ける。

難民の子どもたち2400人がフランスの学校へ

心のケアと並んで、子どもにとって重要なのが、学校へ通うことだ。フランス国内に当面の生活拠点が見つかると、難民の子どもたちも現地の学校へ通うことができる。

フランスでは、国籍にかかわらず、すべての子どもたちに教育を受ける権利があり、公立の学校は無料。3歳から16歳までが義務教育の対象で、日本とは異なり、幼稚園も義務教育の一環だ。

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