ロシアの侵攻で増す懸念「台湾有事」日本への影響 「今日のポーランドは明日の日本」になる可能性

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習近平・共産党総書記や中国共産党指導者の発言や文書において、彼らが台湾の人々を「同胞」や「同じ民族」と呼ぶことはあっても「人民」と呼びかけたものを目に、耳にしたことは残念ながら、ない。中国が巧みに使い分けていることに留意するべきだろう。

そうだとすれば、人民解放軍将兵の台湾の人々へ向けるまなざしが、大陸の人民に向けるそれとは異なっているとしても不思議ではない。中国共産党政権に反対する者、人民解放軍に抵抗する者は、たとえ同じ中国人であっても「人民の敵」である。これは国共内戦以来、ずっと繰り返されてきた歴史でもある。国際社会は1989年に起きた天安門広場における惨劇を目の当たりにした。

人民解放軍将兵にとって、抵抗する台湾の人々は人民解放軍が守るべき「人民(people)」ではないということだ。

中国による台湾侵攻の可能性は誰も否定できない

今回のロシアによるウクライナ侵略では、少なくないロシア人がロシアの国内外においてこの武力侵攻に反対を表明している。プーチン大統領は反戦を唱えるロシア人を「くずどもと裏切り者を一掃する」と言って切り捨てた。

中国共産党の決定を支持する中国人のみが中国人民であるとするならば、台湾の同胞に対する人民解放軍の攻撃を表立って反対する中国人民は現れないだろう。中国共産党の決定に反対する者は人民ではない、「くずどもと裏切り者」として中国大陸や台湾から一掃される対象だ。

ロシアによるウクライナ侵攻に対するウクライナ人の抵抗と、国際社会とりわけアメリカ、欧州をはじめとする西側世界の反応を中国がどのように学んだのかはわからない。

プーチン大統領を除く国際社会の大半が、ウクライナ侵攻を予想していなかったのと同様に、中国による台湾侵攻の可能性も誰も否定できない。ましてや、2027年から2035年にかけて軍事力を含む中国の国力はアメリカのそれを凌駕する可能性も指摘されている。

もし、中国による台湾侵攻が生じた場合、今回のウクライナ市民がとった行動と同様に、多くの台湾の市民が武力侵攻に抵抗するだろうし、老人や女性、子どもなど抵抗するすべのない人々、中国共産党による統治を受け入れられない人々は台湾を脱出せざるをえなくなる。

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