ロシアの侵攻で増す懸念「台湾有事」日本への影響 「今日のポーランドは明日の日本」になる可能性

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ウクライナがロシア・旧ソ連から分離独立(1991年)してからわずか30年。台湾が清帝国から分離(1895年)してから127年、蔣介石国民党政権による中国共産党政権とは異なる政治体制(1949年)となってから73年が過ぎた。

現在、台湾の人々の圧倒的多数は現状維持を望んでいる。たとえ将来に統一を望む人々も、統一イコール共産党の統治を受け入れているわけではない。昨年夏に行われた世論調査では「台湾人の共産党への感情は氷点下」との指摘もある。

そのような台湾の人々が、はたして中国の武力侵攻に唯々諾々と白旗をあげるだろうか。

中国が台湾に武力侵攻を行う場合、その主力は中国人民解放軍である。「人民解放軍(People’s Liberation Army)」や「中華人民共和国(People’s Republic of China)」というように中国は人民の国であり、軍隊は人民を解放する軍隊である。

人民は英語ではPeopleと公式訳されている。人民、peopleは、広く一般に「人々」を意味する、つまり人民とは中国人の総称であると多くの日本語話者や英語話者は信じているかもしれない。

しかし、中国共産党の指導下にある中国大陸では、人民は必ずしも中国人を意味するものではなく、peopleも必ずしも「(中国の)人々」を表す言葉ではない。この点を誤解したまま台湾問題を論じると理解にギャップが生じかねない。

「人民」ではない中国人や中華民族が存在する

中華人民共和国の国籍を持つ人々に対し、国内法上は「公民(citizen)」という言葉が用いられている。「人民」はもっぱら中国共産党によって用いられる政治的な用語であり、一般的には「中国共産党の政治体制を支持する人々」を指し、必ずしも中国国籍を持つすべての「公民」を対象とするものではない。

中国でいう「人民の敵」とは、国共内戦当時の国民党勢力であり、文化大革命のころには反革命分子と呼ばれる旧地主階級や知識人などが主たる対象であった。「人民の敵」は必ずしも外国の敵対勢力であるわけではなく、最近では汚職などで摘発される共産党幹部なども含まれる。

中国大陸で用いられる「人民」は極めて政治色の強い用語であり、公民や、同胞、民族などの類似した用語とは明確に分けて理解する必要がある。公民や同胞であっても「人民」ではない中国人や中華民族が存在するということだ。

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