ロシアの侵攻で増す懸念「台湾有事」日本への影響 「今日のポーランドは明日の日本」になる可能性

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今回のロシアの侵略に対して、ウクライナ人の多くが武器を手に抵抗している。支持率が下落気味であったゼレンスキー大統領への支持も、ロシアの武力侵攻とそれに対する現政権の抵抗姿勢を背景に上昇し、ウクライナ人の団結がいっそう進んでいる。

親ロシア、親欧米に分かれていたかつてのウクライナは「ウクライナ人」としての一体性、アイデンティティをいっそう強固なものにしたように見える。旧ソ連の時代、スターリン政権下で起きたホロドモールと呼ばれる人工的大飢饉などの記憶を通じて、必ずしもロシア人のウクライナに対する思いをウクライナ人が共有しているわけではない。ロシアへの再統合やウクライナのロシア化を望むウクライナ人はほとんどいない。

3月24日現在で370万人を超える女性や子どもたちがウクライナ国外に脱出していることもその証左だ。夫や父親がウクライナに残って抵抗を続けているが、この戦争が長引けば長引くほど避難生活も長引き、もしロシアが勝利してウクライナの国の姿が変われば、国外に脱出した市民が帰国して元の生活を取り戻すことは困難だ。

中国も台湾を「不可分かつ同一の民族である」と主張

中国も台湾を不可分かつ同一の民族であると繰り返し主張している。

王毅外相が「台湾問題はウクライナ問題とは根本的に異なるものであり何ら比較にならない。最も根本的な違いは、台湾は中国の不可分の領土であり、台湾問題は完全に中国の内政問題」であり、「台湾海峡の両側は同じ歴史的起源、同じ文化的ルーツを持ち、同じ中国に属していることを強調したい」と言及していた。

台湾にはウクライナの6割程度、約2400万弱の人々が暮らしている。同胞であり同じ「中華民族」が住むその台湾に対して中国は武力攻撃の可能性を否定していない。

中国は建国以来、繰り返し台湾への武力行使の可能性を国際社会に表明し、2005年には「反国家分裂法」を制定して国内法としての武力行使を正当化した。さらに近年は、台湾ADIZ(防空識別圏)への中国軍機の侵入や台湾周辺海空域における中国海空軍による活動が急増しており、中国のこのような活動は、台湾のみならず国際社会に習近平政権に対する懸念を引き起こしている。

台湾への武力侵攻が現実のものとなれば、多くの台湾市民に被害が生じることに疑う余地はない。

台湾には、国共内戦を経て大陸にある故郷を追われた歴史を記憶している外省人と呼ばれる人々や、日本が敗戦した後、中国人同胞として迎え入れた国民党軍によって激しい弾圧を受けた歴史を記憶している本省人と呼ばれる人々がいる。

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