いい人間関係「開拓」したい人に伝えたい4大秘訣 現代社会で忘れられている「頼り合う」メリット

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ビジネス界における人材を表すものとして、ヒューマン・リソース(人的資源)やヒューマン・キャピタル(人的資本)という言葉がありますが、ソーシャル・キャピタルのほうは、「あるネットワークや社会構造の一員であるということでつながることができる資本」のことであり、個人ではなく、グループや地域レベルでのまとまった活動や状態を指すものです。

利害関係のあるビジネス上のネットワークではなく、より広い意味で、「その人の社会性に関係する、家族、近隣、知人、すべてを含む幅広い人間関係が、あなたの財産になる」と考えるとわかりやすいでしょうか。

私が初めてこの概念を知ったのは、2008年にハーバード公衆衛生大学院に留学し、社会疫学を教えていた研究科長のイチロー・カワチ先生の授業を受けた時でした。留学生活は貧困と過労の連続で、人の助けなしには生き延びることができていませんでしたので、実感として、「なるほど、人間は社会的動物で、コミュニティや人間関係に心身両面の影響を受けるのだな」と、社会疫学という学問の重要性を痛感したのです。

日本でも、少子化対策の研究で、ソーシャル・キャピタル指数の高い地域は孤独死が少なく出生率が高いこと(内閣府、平成15年)など、さまざまな調査からソーシャル・キャピタルの重要性が明らかになっています。

頼ることで人間関係が生まれ、頼られることで自己価値観が向上する。助けを求めることで新しいリソースが見つかり、エネルギーがわき、困った状況の中で人とつながることができる――これはよくよく調べれば、人間が社会的動物として古くから培ってきた能力です。

「人に頼る」原始的なスキルが低下している現代

ところが現代社会に生きる私たちは、他の機械やツールで代用できるので、人間関係による助け合いの頻度が減り、「人に頼る」という原始的なスキルが低下しました。

私自身、医師として、母親として、学生として、研究者として、また一支援者として、さまざまな立場を通して「人に頼ること」「人に助けられること」について勉強を重ねた中で、現代社会では「頼り合うことのメリット、総力戦で当たることの重要性」が忘れられている、という思わぬ落とし穴があることに気づきました。

ソーシャル・キャピタルは、ソーシャル・ネットワークとは異なります。ネットワークとは新しい人と出会うプロセスのことであり、1人が持つ接触の機会を増加させるものです。ネットワーク上で出会う人々がやがて資本となるまで、ネットワークはソーシャル・キャピタルとは言えません。

このソーシャル・キャピタルは経済的な見返りをもたらすとも言われています。例えば、社員1人ひとりの持っているリソースを他の社員も使えるようになったり、メンバーや上司や部下の相互理解によって離職率が低下したりします。また、それらによって採用に関わる費用や研修費の節約、自然に作り上げられる相互理解の効果などがもたらされると言われているのです。こうしたソーシャル・キャピタルの恩恵は、もちろん会社の業績とも相関します。

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