経済安保の推進に絡むあまりに「怪しげな構図」 金融庁、防衛省への「不当介入」に国会で疑義
今国会の最重要法案である経済安全保障推進法案が3月17日に審議入りした。野党も経済安全保障には概ね理解を示しているため法案そのものに大きな対立構造はない。
だが、法案策定に至るまでの過程で「一部の人々の利得のために政策が歪められていないか」という疑義があがっており、政府は苦しい答弁を強いられている。
いずれも火種となっているのは、無届けの兼業や政府の非公表文書を漏洩したことで懲戒処分を受けた藤井敏彦・前国家安全保障局(NSS)担当内閣審議官だ。経済安保法案の責任者だった藤井氏は「週刊文春」に兼業疑惑を報じられて更迭、3月9日付で辞職した。
しかしその後の国会審議で、藤井氏とともに経済安保の旗を振ってきたEYストラテジー・アンド・コンサルティング(近藤聡代表取締役社長)のパートナーである國分俊史氏、自民党の甘利明前幹事長ら、「一体となって動いてきた」(経産省幹部)とされる3人が絡む疑惑が浮上している。
金融庁の文書をめぐる“修正”
端緒となったのは、藤井氏の非違行為について政府が公開した調査報告書に付されたメール画像だ。
「これで明日金融庁が甘利先生のところにいくはずです」。こんなメッセージを添えて藤井氏が國分氏にメール送信したのは2021年4月27日のこと。メールに添付されていたのは「投資家と企業の対話ガイドライン」という金融庁の文書。当時は改訂作業中で政府内では非公表文書に分類されていた。
藤井氏はなぜ非公表文書、それも改訂作業中のものを國分氏に送ったのか。その疑問を解く国会質疑が3月18日と25日の2度にわたり、立憲民主党の山岸一生衆議院議員と政府の間で交わされた。
焦点は2つの文書だ。1つ目は2021年4月6日付で金融庁が公表した「投資家と企業の対話ガイドライン」の素案。この素案について金融庁は5月7日まで1カ月間のパブリックコメントを実施して企業や投資家から意見を募った。そのうえで6月11日に改訂版を公表したものが、2つ目の文書だ。
素案と改訂版を見比べると、後者には「国際的な経済安全保障を巡る環境変化への対応」というフレーズが差し込まれている。素案から実質的に修正されたのは、この1カ所のみだった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら