文春砲で辞めた経産官僚に今なお残る「疑惑」 経済安保の「お仲間」に内部文書漏えいか

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藤井敏彦・前審議官が「内部文書」を漏洩した際のメール。3月9日、政府が証拠としてマスコミに公開した(記者撮影)

3月9日、政府は国家安全保障局(NSS)の初代経済班長だった藤井敏彦・前審議官に対し停職12カ月の懲戒処分を下し、発表した。

経済産業省出身の藤井氏は2月8日まで経済安保法制準備室長という、今国会最大の目玉となる経済安保法案の責任者の地位にあった。しかし2月9日、民間のビジネススクールで「師範」として講師を務め高額な報酬を得ていた疑いを『週刊文春』(電子版)が報じ、政府は法案審議への影響を避けるため2月8日に藤井氏を更迭。その後、NSSなどが藤井氏の非違行為に関する事実関係を調査していた。

政府が公表した調査報告書によると、藤井氏が国家公務員法で定める兼業手続きを経ずに報酬の発生する兼業を行っていた期間は、2013年から2022年まで延べ9年間。総額約1600万円の報酬を得ていた。

また、2016年以降は61件の講演や執筆を行い、総額約980万円の報酬などを受け取りながら、国家公務員倫理法が定める贈与等報告書の提出を行っていなかった。藤井氏に講演を依頼していた企業の中には、経産省在籍時代の利害関係企業が5社含まれていたことも明らかになっている。

政府の非公表文書を外部にメール添付

調査報告書は、さらに重要な事実を記している。

藤井氏が、多摩大学ルール形成戦略研究所の國分俊史教授に対し、政府の非公表文書をメールで送付していたというものだ。送付日時は2021年4月27日(火)16時33分。メール添付されていたのは、金融庁からNSSに送達されていた対外非公表文書、すなわち政府の「内部文書」だ。

國分氏といえば、経済安保論に火を付けた自民党の新国際秩序創造戦略本部(甘利明座長)でアドバイザーを担い、現在も自民党経済安保対策本部アドバイザーや公安調査庁経済安全保障関連調査アドバイザーという肩書きを持つ経済安保の「専門家」だ。

(写真上:EY Japanホームページ、左:共同、右撮影:尾形文繁)

2022年3月2日には立憲民主党の経済安保プロジェクトチームにも講師として招かれている。日本経済新聞をはじめ各メディアに論考やインタビュー記事が掲載されるなど、この分野のオピニオンリーダーというべき存在だ。

國分氏が経済安保を啓発していくうえで使っているのが、多摩大学ルール形成戦略研究所の所長という肩書きだ。今回処分を受けた藤井氏も同様、経済安保の講演をする際には同研究所の客員教授という肩書きを使っていた。同研究所には自民党の甘利前幹事長もシニアフェローとして名を連ねている。

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