文春砲で辞めた経産官僚に今なお残る「疑惑」 経済安保の「お仲間」に内部文書漏えいか

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政府が公開したメール画像によれば、藤井氏は國分氏に内部文書を送付する際、「これで明日金融庁が甘利先生のところにいくはずです」と記している。政府内では以前から「國分氏、甘利氏、藤井氏は一体となって動いてきた」(経産省幹部)と言われており、当メールはその一端を垣間見せた格好だ。

だが、このメール画像が示唆しているのは3人の関係だけではない。

藤井敏彦氏が國分俊史氏に送っていたメールの画像。テンプレートの文字列はEYのメンバーが送るメールに付随するものと同じだ(記者撮影)

メールの下に付いているテンプレート(The information ~)。このテンプレートは、世界4大会計事務所・総合コンサルファームの一角であるアーンスト・アンド・ヤング(EY)のメンバーがメール送信する際に付随する文字列と同じだ。黒塗りになっている箇所に該当する文言は「EY」の可能性が高い。

多摩大学教授や東京大学特任教授などさまざまな肩書きを持つ國分氏だが、氏の本業での職位はEYストラテジー・アンド・コンサルティング(近藤聡代表取締役社長)のパートナーである。

同社は近年、政府の経済安全保障に絡む事業をいくつも受注契約している。つまり藤井氏が内部文書を漏洩した相手は政府の事業を受注しているコンサルティング企業、利害関係企業の幹部だったということになる。

政府「アルファベット2文字」

東洋経済は國分氏に「藤井氏に(内部文書を送るよう)依頼をしたのか」「このメールアドレスはEYのものではないのか」の2点を問うた。

國分氏は「依頼はしていない」としたうえで、EYのメールアドレスか否かについては「政府が非公開にしているものは私から答えられない」と回答した。

報告書では「國分俊史教授」に漏洩したとしているが、國分氏は政府の経済安保事業を受注する民間企業の幹部でもある(記者撮影)

だが、政府の見解は微妙に異なる。3月11日の衆院内閣委員会で立憲民主党の森山浩行議員が当メールについて質問すると、NSSの室田幸靖審議官は「(黒塗りにされている箇所は)アルファベット2文字であり、國分氏が所属している団体のひとつの略称」であると回答、「EY」を匂わせるところまで踏み込んだ。公開するか否かについては「國分氏が了承すれば出せる」とした。

続く14日の参院予算委員会で同党の森ゆうこ参議院議員がアルファベット2文字について「EYではないのか」「EYは政府の事業を受注している。藤井氏は利害関係企業に情報を漏洩したということではないのか」と問うと、室田審議官は、内閣委員会で引き続き協議していく事項であると質問をかわし、「EY」であるかどうかについては「民間団体と協議を行っていく」と、國分氏サイドと協議をしていく意向を示した。

3月9日、藤井氏はみずから辞職を願い出て、承認された。だが、これにて一件落着とするわけにはいかない。藤井氏が國分氏に漏洩した情報は本当にこれだけなのか。政府事業の契約にかかわる情報は含まれないのか。さらなる解明が必要だ。

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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