地銀の「格差」を見分ける3つのポイント 全国100社の最新決算を総まくり

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地方銀行の体力差はどれくらいあるのか。最新決算を基に独自ランキングを作成。見るポイントは健全性、収益性、成長性だ。

地銀は予想外の好決算だったが、金融庁の視線は厳しい(編集部撮影)

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5月に出そろった2021年3月期の地方銀行決算。上場する全77社(グループ)のうち、半数を超える41社が最終増益、36社が減益となった。

コロナ禍で企業収益の悪化や倒産が増え、どの銀行も貸し出しに対する引き当てが増えると覚悟していた。が、実際は政府の補助金などが功を奏し、倒産の連鎖は回避された。「この着地は予想だにしていなかった」(関東圏の地銀の財務担当者)という声も出る一方、ある地銀幹部は「今後、2〜3年は厳しい決算になる」と浮かない表情だ。

地銀が2020年に積極的に取り組んだ無利子・無担保融資(3年間実質無利子、最大5年間元金返済不要)は2023年から多くの企業の利子返済が始まる。そのとき、業況が上向いておらず返済ができなければ、既存の融資が焦げ付くリスクがある。だからこそ、「今後、2~3年」が厳しいのだ。

収益悪化で銀行の経営体力が低下していくと、生き残りをかけた銀行同士の提携や経営統合もますます加速するだろう。それを見越したかのように、昨年から今年にかけて日本銀行と金融庁は期間限定の再編支援策を打ち出している。

金融庁の氷見野良三長官は6月14日に都内で行った講演で、「(再編支援の)時限を意識して腹を決めて取り組んでほしい」と語った。要は、地銀に対して「躊躇なく生き残りの方策を決めろ」と言っているわけだ。

地銀を3つの指標で分析

再編の帰趨を占うのは、単独で生き残れる体力がどこまであるかだ。それを見るため、未上場も含めた全国の地銀100行で最新の2020年度決算を分析。健全性、収益性、成長性といった要素を示す財務データを基に独自採点し、総合ランキングを作成した。

また、足元の環境で注目される「不良債権比率」「経費率」「貸出残高増減」の3つは、個別のランキングを作成した。

不良債権比率は貸出全体のうち、当初の契約時の元本や利息の支払いがなされていない債権(不良債権)がどのくらいあるかを示すもの。足元で倒産は増えていないが、すでに不良債権比率が高い銀行はその分余力が少ないだけに注意が必要だ(「不良債権比率」ワーストランキングはこちら)。

貸出残高増減率は2019年度からどれだけ貸し出しを増やしたか。2020年度は、企業の資金繰り支援で大幅に増加えた地銀が多く、各地銀が企業の資金需要をどれだけ取り込めたかがわかる(「貸出残高増減率」ワーストランキングはこちら)。

一方、無利子・無担保融資によって、「本来であれば倒産すべき『ゾンビ企業』を延命させている可能性もある」(銀行関係者)。返済猶予期間がなくなる3年後、返済が始まるタイミングでそれらが顕在化するリスは、意識しておく必要があるだろう。

経費率は業務粗利益に対する経費の割合で、経営の効率性を表す。経費率が高いということは過剰な人員や店舗網を抱えていることの現れだ。収益が細る中で利益を維持するには、経費を削るしかない(「経費率」ワーストランキングはこちら)。

日本銀行が導入した「地域金融強化のための特別当座預金制度」では、一定以上経費率を下げた地銀や経営統合をした地銀を対象に、日銀に預ける当座預金に年0.1%の上乗せ金利がつく。つまり、経費率は当局が特に重視する指標なのだ。

総合ランキングと合わせて、各種のランキングを見ることで、銀行の体力差がより鮮明に見えてくるはずだ。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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