北海道の信用金庫職員として、数多くの中小企業を再生してきた実績を持つ伊藤貢作氏。2021年にはその手腕が買われ、島根県の第二地方銀行、島根銀行が外部アドバイザーとして招き入れた。伊藤氏の目に映る、地銀の実情とは。
――地方の銀行は「数が多すぎる」「行員の稼ぐ力が弱い」などとよく指摘されます。実際に現場を経験した上で、どう感じていますか。
地方で人口が減少しているから地銀の数を減らせというのは、やや短絡的ではないか。重要なことは痛んだ地域経済をどう建て直し、いかに持続可能な形に変えていくかということだ。合併などの再編はそのための手段でしかない。
ここ数年、コロナ禍で疲弊している地域を回ったが、再編をした方がいい地域と、しない方がいい地域がある。私が外部アドバイザーとして入った島根県は、再編をしない方がいいだろうと思える地域だった。
取引先シェアの5割超を握る(第一地銀の)山陰合同銀行は、県の主要産業を押さえている。地域の小規模事業者は信用金庫や信用組合がそれぞれのエリアに根付いて支援しており、互いに営業を争ってはいない。(第二地銀の)島根銀行はその中間ゾーンをカバーする位置付けだ。それぞれの役割をきちっと果たしていけば、必ずしも再編をする必要はない。
銀行員の能力は低くない
――ただ、日本銀行の低金利政策が続き、資金需要も年々細っている中で地銀が利益を出し続けることは難しくなっています。島根銀行は2017年3月期に本業のもうけを示すコア業務純益が赤字に陥り、SBIホールディングスが救済に入りました。SBIが出資して資本増強をしてもなお稼ぐ力が弱いからこそ、外部アドバイザーを招聘したのではないですか。
島根銀行はメディアがよくやる地銀ワーストランキングの常に上位にくる銀行だが、彼らと1年間一緒に仕事をしてきて「能力が低い」と感じたことは一度もなかった。
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