一流の人は、ハードワークでも心が折れない 心の筋肉を鍛えるための方法とは?

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久世浩司(くぜ・こうじ)●1972年生まれ。慶応義塾大学卒業後、P&G入社。化粧品事業のマーケティング責任者としてブランド経営と商品開発に国内外で従事。その後、国内初のポジティブ心理学の社会人向けスクールを設立。著書に『「レジリエンス」の鍛え方』『親子で育てる折れない心』など。シンガポール在住。(撮影:梅谷 秀司)

──2番目が「気晴らし」です。

ストレスの宵越しをしないためにお勧めなのが、歩く行為と呼吸の流れに意識を集中させる早足散歩。運動や音楽、就寝前の呼吸法、感情を文字にして書き出すなどもいい。その中で自分が好きなものを選ぶと長続きします。運動が好きなら就寝前の簡単なストレッチとか、その日がダメなら週末に走るなどして、せめて翌週に持ち越さないことです。有酸素運動は、粘着性のあるネガティブ感情を別の感情にシフトさせるのに有効。出口のない堂々巡りから別の意識にスイッチしていたら、うまく気晴らしができた証拠です。

要は、しつこいネガティブ感情をまずラベリングして、自分が何にとらわれているかに気づき、そこから別の意識にシフトさせる流れが重要。モヤモヤが続くことを意図的に断ち切ろうとすると、かえってそっちに焦点が行ってしまうから、全然別のことをしたほうがいい。

──気晴らしといえば、手っ取り早いのが飲み会、カラオケ……。

するなら職場とまったく関係ない友人や家族、一人でならいいと思います。純粋に歌を歌えば気晴らしになる。飲み会も、食事自体は会話をしながら楽しむ体験だから、気晴らしにはならないけど、ポジティブな感情は高まります。昔話で盛り上がったとか、いい友人がいてくれたことに感謝するとかで、心という器の中身がネガティブからポジティブに置き換わる。面白いことにネガティブは右前頭葉、ポジティブは左前頭葉とそれぞれ使う脳の部位は違ってて、両方が同時に活性化することは基本的にない。これは脳科学的にも証明されている。実は左前頭葉が活性化していて幸福感の高い人が、いちばんレジリエンスのある人なんです。

サポーターの存在が重要

──立ち直る力の鍛錬といっても、独りストイックに追求するのではなく、サポーターを持つ大切さを強調されていたことが、興味深かったです。

レジリエンスの強い人は必ず周りにサポーターを持っていますね。一人では限界があります。

P&G時代の私のオーストラリア人上司がまさにすばらしいサポーターでした。困ったときは躊躇せず「I Need Your Help」とメールにタイトルをつけて助けを求めてください、最優先で目を通しアクションを起こしますから、と部下に伝えて回りました。こういう援助希求力、人の助けを求める、人の助力を自分から主体的に求めていく態度・行動がないと本当に困難なときやっていけません。そういう行為を許容する文化も必要です。そのオーストラリア人上司は自分が率先して、私もあなたが必要と言う、あなたも言ってください、という文化を企業の中で作り上げた。それが五月雨式に拡散していって、みんなが援助希求力を持つ強い組織に変わっていきました。

──助け合う組織は創造力が高いという研究成果もあるそうですね。

『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』 SBクリエイティブ(1300円+税/255ページ)

米シリコンバレーや西海岸で成長している企業は、積極的に社内コミュニティを取り込んでいます。たとえばピクサーでは、クリエーター個人が仕事に没頭する空間はあくまでクローズドに、共有空間は天井も高くオープンにして、「一人ではない」という空気を演出しています。

日本ではマイクロソフトもオフィスを移転したとき、オフィス内の至る所に3、4人用のちょっとした小会議室を設けました。それが生産性に結び付くからです。人がコネクトする頻度が高まれば高まるほど、仕事のやり直しや仕切り直しが減る。プロジェクトの早期の段階でコミュニケーション頻度を高めておくと、後になって「聞いてないよ!」の覆しが減るそうです。小さなことでも「どうかした?」という話になり、本当に困ってしまう前に対処できる。結果的に個人も組織もレジリエンスは強まります。

これだけ変化の激しい時代に会社は何もサポートしてくれない、尊敬できない上司は単にストレスの種、というのはよく聞く話。これを逆手に取って、自分を強くしていく、レジリエンスを鍛えていくいい機会、と考えを切り替えてほしいんです。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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