「ベイマックス」、実は"戦隊ヒーロー"なワケ 「少年とロボットのふれあい」はホンの一部

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ちなみに、ネット上では、本家・米国版の予告編を見ることができる。こちらは、ベイマックスはケア・ロボットというよりも戦闘ロボ的であり、ヒロと友人たちによる戦隊ヒーロー映画ものの要素がより強くアピールされている。

日本の予告編にもこうした要素が少しだけ登場する。したがって映画と予告編の内容がまったく異なるということでもない。当然のことながら、予告編とは、わずか1~2分で、その映画を見たいと思わせる必要がある。時間が短いだけにポイントを絞る必要がある。そのため、米国では戦隊ヒーロー的な要素が強調され、日本では感動的な要素が強調されたということなのだろう。

原題は『Big Hero 6』©2014 Disney. All Rights Reserved.

なお、『ベイマックス』には着想の原点がある。米国マーベルコミックスの『Big Hero 6』がそれだ。マーベルコミックスは、スパイダーマンやアイアンマンなどヒーローもののコミックスを得意とする。『Big Hero 6』もこの系譜に連なっている。

コミックスと映画では、キャラクターの雰囲気はまったく異なる。コミックスはいかにもアメコミタッチだし、映画はどこまでもディズニー系のキャラクターだ。とはいえ、『ベイマックス』の原題も『Big Hero 6』である。制作サイドは、米国内では、映画とコミックスの関連性を隠す意図はまったくなかったわけだ。

つまり、ディズニーは、各国の嗜好にあわせ、きめ細かいマーケティングをしているわけだ。日本人は、「感動シーンを強調した、涙が出るような映画が好き」ということが分かっているのである。

マーベルはディズニーの傘下

ちなみにマーベルコミックスのキャラクターの権利を持つマーベル・エンターテインメント社の親会社はディズニーである。2009年に40億ドルを投じて買収した。

マーベルの人気キャラクターである「スパイダーマン」はソニー・ピクチャーズが映画化権を持っている。他のキャラクターもパラマウント、20世紀フォックスなどの手によって映画化されてきた。こう考えると、親会社であるディズニーがマーベルのキャラクターを映画化するのは自然な流れといえる。

これまでマーベル社のキャラクターは他社では実写映画化されるケースが多かった。今後は『ベイマックス』の成功をきっかけにディズニーによるCGアニメ化という流れができるかもしれない。少なくとも、『ベイマックス』の続編は作られても不思議はない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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